最判:自動車の所有権留保

金融法務事情 借金問題

弁護士石井です。

金融法務事情2080号に自動車の所有権留保に関する最判平成29年12月7日が掲載されていたので紹介です。

金融法務事情

クレジット会社等で自動車ローンを組んで買った際、いくつかのパターンがあります。
1 所有権留保なし → 買主名義で登録
2 所有権留保あり → クレジット会社名義で登録(買主は使用者)
3 所有権留保あり → 販売店名義で登録(買主は使用者)

 

ローンが払えなくなった場合にどうなるか。
1は所有権留保がないので、車は取り上げられません。
2は所有権留保があるので、クレジット会社がこれを行使すれば取り上げられます。

3の場合が問題にされていました。
所有権留保はあるのに、クレジット会社名義なので、車の引渡請求権があるのかどうか争われていました。

 

民事再生での話で、クレジット会社が登録をしていなければダメだとした最判平成22年6月4日があるものの、その後、クレジット会社が約款を変更するなどしたことで、下級審では判断が分かれていました。

 

この最判があったので、3の場合、個人再生手続などで、クレジット会社からの引き上げ請求を拒絶し、再生開始決定をもらうと、自動車ローン債権は別除権債権ではないとされ、車の査定価格がそのまま清算価値になる、車が事実上、引き上げられないで済むというケースもありました(販売店名義の登録は残ったまま)。

 

このような車が残ったまま破産管財人が選ばれた場合、管財人としてどうするか、という点も弁護士の間でも意見が分かれていました。

 

今回の最判平成29年12月7日は、

「自動車の購入者と販売会社との間で当該自動車の所有権が売買代金債権を担保するため販売会社に留保される旨の合意がされ,売買代金債務の保証人が販売会社に対し保証債務の履行として売買代金残額を支払った後,購入者の破産手続が開始した場合において,その開始の時点で当該自動車につき販売会社を所有者とする登録がされているときは,保証人は,上記合意に基づき留保された所有権を別除権として行使することができるものと解するのが相当である」

と判断しました。

保証会社からの自動車引渡請求を認めた判断です。

最判平成22年6月4日との整合性については、

「所論引用の判例(最高裁平成21年(受)第284号同22年6月4日第二小法廷判決・民集64巻4号1107頁)は,販売会社,信販会社及び購入者の三者間において,販売会社に売買代金残額の立替払をした信販会社が,販売会社に留保された自動車の所有権について,売買代金残額相当の立替金債権に加えて手数料債権を担保するため,販売会社から代位によらずに移転を受け,これを留保する旨の合意がされたと解される場合に関するものであって,事案を異にし,本件に適切でない。」

と述べています。

この最判の射程範囲は議論されていますが、今後は、上記のように、事実上、車を引き上げられないで済むという解決は難しくなることが増えるでしょう。

 

 

厚木の弁護士事務所 相模川法律事務所

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