弁護士石井です。
受動喫煙防止法すなわち健康増進法の改正法が先週成立したので、それに合わせてタバコに関する話をします。
健康増進法が改正されて屋内でのたばこの喫煙が厳しくなりました。
飲食店とか事務所とか多数の人が出入りする施設での喫煙が制限されます。
趣旨としては受動喫煙を防ごうというものです。
多数の人が利用する施設の屋内は原則禁煙に。
ただ、屋内に関してもいくつか分類されていて、学校のようなところと、事務所とか飲食店とは区分けがされています
その上で事務所とか大きい飲食店に関しては、原則禁煙。または喫煙専用室を設けることで例外的に喫煙可能となります。
ただこういうルールを小さい飲食店にも適応してしまうと、小規模な飲食店が喫煙の専用室を設けるのは大変ということで既存の経営規模の小さい飲食店に関しては一定の猶予措置がとられています。
経営規模小さいというのはどういうものなのかというと、2つの基準があります。
一つ目の基準が資本金。
個人や、会社の場合には資本金が5000万円以下。
もう一つは客席の面積。これが100平方メートル以下。
この2つの要件を満たしていないと「経営規模の小さい」飲食店にはならないとされています。
このような禁煙場所で喫煙した場合、罰則がはっきりと規定されています。
個人が喫煙した場合は30万円以下の過料。
施設管理者が灰皿などの喫煙に関する道具などを提供したという場合は、50万以下の過料。
この改正健康増進法、受動喫煙防止法に関しては都の条例とかよりも緩やかであって、基準としても例外を認めているので、甘いという意見もあります。
都条例では面積とか例外規定がないです。
我々の神奈川県では禁煙とか分煙というな表記をする必要があります。罰則に関しては、個人の違反で2万円、管理者の場合、5万円ということで金額に関しては改正法の方が重い罰則になっています。
それにしても、タバコをやめられない人が本当に多すぎると感じます。
統計上の喫煙率というのは、男性と女性で違って、男性が最近の統計だと28%ぐらい、女性は9%とされています。
よく感じるのが多重債務者の喫煙率が高いという点。
自己破産手続きとか個人再生手続きみたいな裁判所に申立をする事件だと家計状況でどういうものにお金を使っているのかというのを示す必要があります。
その中でかなりの割合で、タバコの支出があると感じます。
借金してでもタバコを止められない人が多くてちょっと衝撃です。
また、ホームレスの刑事事件とかを受けたりすると、お金がなくて万引きをしてしまったとか、そんな人でも、タバコを吸っている事件があり、食べ物よりもタバコか、と衝撃を受けたこともあります。
このタバコの依存って、いつから始まったのか気になったので、若干調べてみました。
タバコの歴史はコロンブスから始まったようです。
コロンブスが海を渡っていったら、新大陸の先住民が喫煙していて、ヨーロッパに持ち込んだというような話です。
ヨーロッパで習慣化してアジアとかイスラムとかに広まっていったそうです。
先住民がなぜ吸っていたのかというと、健康に良いと考えていたとか神聖なものと考えていたとか言われています。
そういう健康に良いとかいう理由でスペインでもこれが習慣化してしまって、ヨーロッパに広まっていたというような話です。
タバコに関してもまいくつか吸ったりとか噛んだりとか、使い方がバラバラに広まっていたということで、例えばナポレオンが広めた方法とかもあったりするそうです。
このヨーロッパに広まっていく段階で、早い段階で結構反対論とかもあったそう。
すなわち、健康を害するんじゃないかという意見。
しかし、早い段階で、「これやめられないんだよ」みたいな依存コメントが書いてあったそうです。
昔は、食糧不足で、空腹感を抑えるという趣旨で利用する人もいたそうです。
空腹を紛らせるためにタバコを吸っていたという可能性ですね。
薬物とかのように、精神に直接影響を与えるようなものではないとして、文化として広まってしまったようです。
喫煙に関しては、弾圧されたり、法律で禁止することもあったのですが、結局うまくいっていません。
日本でも徳川家康とか家光の時代に禁煙令を出したそうですが、結局、庶民の習慣は変えられなかったとのことです。
あとは、国自身がこのタバコからの税収に依存してしまったという点もあります。どういうことかというと、国はタバコを輸入したりして関税収入を得ていたりしました。
これらの金額が結構な税収入になったので、それがなくなると困る体勢になってしまった。
直接課税する国以外に、国家がタバコ事業を統制、すなわち専売していく国も出てきたようです。国が直接ではなくても、民間企業とかにやらせて、そこから収益を得るという形で、タバコ収入に依存していたわけです。
多くの国がこの税収に依存してしまったと点がタバコ文化がなくならなかった理由の一つではないかということです。
日本でも60%以上が税金。
しかし、健康面から見ると、タバコにメリットがないことが分かってきます。
健康本をいくら読んでも、タバコが健康に良いという情報は出てきません。
肺がんの原因になるなど、健康面で悪いことが医学的に証明されていきます。
そうすると、国レベルでは、結局医療のコストがかかってしまったり、環境破壊問題もあったりするということで、税収のメリットよりも損ではないかという考えが主流になっていきます。
そして、世界的に喫煙を規制する方向に流れていきます。
日本は遅れていると言われていましたが、オリンピックもあって今回の法律ができたという経緯です。
このような流れを見ていくと、結局国ってのは元々税収とかで考えていたけれどもかえって損だと気づいたこと、健康面でもタバコにはメリットがないとされたことから、もはやタバコはタバコ事業に関わる人にしかメリットがないものとなっています。
合理的に考えれば、ほとんどの人に、タバコを吸う理由はなく、悪い習慣で続いてしまっているだけに過ぎないでしょう。
習慣を変える方法に関しては、『良い習慣 悪い習慣』という本があります。
悪い習慣は、置き換えるのが良いとされています。
止めるっていうよりも入れ替える、置き換える方法。
つまり、タバコを吸っていることと同時にできないことを考えて、他の習慣と置き換えるという話です。
喫煙習慣を他の習慣に置き換えてしまえば、メリットのない喫煙なんて続けなくて済むでしょう。
今回の法改正もあって世界的な流れでタバコを吸っている人はどんどん少数派になっていくことになります。
さっさと抜け出した方がいいんじゃないかなと考えます。
今回の参考資料。
『タバコが語る世界史』
タバコが語る世界史 (世界史リブレット) | |
和田 光弘
山川出版社 2004-12-01 |
『良い習慣 悪い習慣』
良い習慣、悪い習慣: 世界No.1の心理学ブロガーが明かすあなたの行動を変えるための方法 | |
ジェレミー・ディーン 三木 俊哉
東洋経済新報社 2014-09-05 |
最近みた映画
『ふきげんな過去』のワンシーン。
主人公の女の子の部屋で、小泉今日子がタバコを吸うシーンがあります。
主人公が、「なんでタバコ吸うのよ」と聞きます。
小泉今日子が答えます。
「自殺なのよ、慢性的な」
タバコは慢性的な自殺である。
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