弁護士石井です。
大分地裁平成28年11月18日判決(消費者法ニュース111号)の紹介です。
消滅時効が完成している債権について、債務名義がないのに、これがあるとして強制執行予告通知を送り、支払をさせたというケースで、その後の時効援用を認めた裁判例です。
債務名義とは判決とかのことです。
株式会社しんわが相手です。
消費者金融、クレジット会社等の金融機関の借金は、期限の利益を喪失してから5年で消滅時効になります。
ただ、時効期間が過ぎても、支払をしてしまうと、借金を認めたことになるので、その後に、時効の主張をすることは許されないとされています。
では、その支払が、虚偽の事実に基づくものだったらどうでしょうか。
というのが今回の問題です。
しんわは、時効期間が過ぎた借金について、「強制執行力を付された判決がある」旨の虚偽の記載がある通知を送り、期限までに支払がなければ強制執行に移行する旨も記載していたとのことです。
これに驚いた借主が、10万円を支払ったところ、その後に、しんわから裁判を起こされたという流れです。
強制執行の予告、というタイトルの通知や、払わなければ強制執行手続を取るという督促がされることは多いです。
今回のケースでは、その根拠として、判決があるという言い逃れができない虚偽事実が記載されていたことがポイントです。
このような督促について、判決では、「少なくとも脅迫的な方法を用いたもので、社会通念上許容されない違法なものといわざるを得ない」と判断しています。
違法な取立なので、その後に時効を援用することも認められるとしました。
ちなみに、支払った10万円の返還請求、弁護士費用、慰謝料請求も認めています。
時効期間経過していても、援用の意思表示をしていないと、督促がされたり、裁判を起こされたりするケースはあります。
裁判となると、そのタイミングで争わないとまずいことになります。
最初の督促が来た時点で、支払前に専門家に相談しておけば、ここまでの話にならなかったというケースです。
みなさまも、督促が来たら放置せずに相談した方がいいですよ。
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