男女間でキャッシュカードを預ける

裁判所 借金問題

弁護士石井です。

婚姻外の男女間でキャッシュカードを預けっぱなしにした場合の法律関係について判断した裁判例紹介です。

東京高裁昭和57年4月28日判決。

男性が女性に対し、銀行預金口座のキャッシュカードを預け、女性がそこから出金。
男性が、これを不当利得として請求したというケースです。

男女の間では肉体関係もあり、女性は妊娠、中絶するなどもしているケースです。

裁判所が認定した事実では、男性には妻がいたもののこれを隠して女性と交際。
その後、妻の存在が発覚。女性は、激昂。
その後、口座残高のほとんど全部にあたる277万円を出金、関係を打ち切る旨を宣言した。

このような経緯で、男性は、女性に対して、出金額の返還を求めたのですが、裁判所はこれを否定しました。

 

「キャッシュカードの所持人は、当該預金を自由に引出すことができるのであるから、これを他人に交付することは現金を交付することと殆ど変らない意味を持つと考えられ、又婚姻外で性的関係を継続している男女の間で男が女に現金を交付したときは、特段の事情がない限り贈与する趣旨であると解すべきであるから 同様の男女の間で男が女に対してキャッシュカードを預けっぱなしにした場合においては、当該男女間に反対の趣旨の明確な合意があれば格別、そうでない限りは預け主たる男は、女において当該預金を自由に引出して消費することを許容しているものと解すべきところ、本件において控訴人、被控訴人間に本件キャッシュカードについて、右のような明確な合意のあったことを認めることができないから、控訴人から本件CDを預けられていた被控訴人は自由に控訴人の預金を引出し、これを取得する権利を有していたものと解すべきである。」
「男女関係が破綻した場合には、女の右の権利は当然に消滅するのではないかとの疑問がないでもないが、そのような婚姻外の男女関係が破綻した場合、経済的な強者である男が、弱者である女に損害賠償ないし慰藉料の趣旨でいわゆる手切金を支払うことは世間に極めてしばしば見られる現象であるから、キャッシュカードを預けられた女がこれを手切金の担保と理解するであろうことは、社会通念上当然であって、従って継続的な男女関係が破綻した場合においても、右と異なる趣旨の合意の存在が認められない限り、女は自分が相当と信ずる手切金の範囲においてキャッシュカードを利用し男の預金を引出し取得する権利を有すると解すべきである。」

 

手切れ金か・・・。

けっこう怖い認定ですね。

安易にカード類は渡してはいけませんね。

 

 

厚木の弁護士事務所 相模川法律事務所

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