弁護士石井です。
保険金と入院についての裁判例紹介です。
保険のCMでは、入院すると、保険金が1日いくらおりる、
みたいな話がされていますが、入院後に保険金の請求をすると保険会社が争ってくる事が多くあります。
保険会社がいう「入院」は、普通の人が考える「入院」とは違うわけですね。
定義の問題です。
多くの裁判で、保険金の支払事由である「入院」に該当するかが争われています。
担当医師の指示どおりに入院したからといって、保険金が支払われるとは限りません。
客観的に、入院が必要な状況だったのかが争われるのです。
必要もないのに入院して保険金請求をしてくる人がいると困るという理由です。
本件でも、裁判所は、客観的にみれば自宅療養、通院治療は可能として保険金請求を否定しています。
入院に関する保険に入りたいという場合には、実際に入院しても
保険金が支給されるわけではない、ということを知っておきましょう。
福岡地裁平成28年2月22日判決
乙野医師は、二回目の治療については診療録にも記載せず、診療報酬請求もしておらず、同治療が無益なものではなかったにせよ、その積極的な必要性がどこまであったのか疑問があり(上記のとおりの本件事故による受傷状況やその後の診察結果等からすれば、前提事実一のとおりの原告の既往症の存在等を考慮しても、結果的に二か月半近くの入院とその後も五か月に及ぶ通院を要した本件において、本件入院により通院治療を続けた場合と比べて早期の回復が得られたとも認め難いものである。)、少なくとも一日二回の上記治療が必要であることから入院の必要性があったと認めることはできない(乙野医師も同治療が必要であることから直ちに入院を勧めたものではないとうかがわれる。)。
そして、これらの原告の症状やその後の治療内容等からすれば、本件においては、客観的にみて、病院に入り常に医師の管理下において治療に専念しなければならないほどの医師による治療の必要性や自宅等での治療の困難性を認めることはできない。乙野医師の上記判断は、結局のところ、原告の症状等からすれば、通常は自宅等での療養や通院での治療も可能であるが、独居者であり、また、歩行の困難性がうかがわれた原告(なお、仮に同症状があったとしても、客観的にみて、自宅等での治療が困難であるほど重いものであったとは認められないことは、上記判示のとおりである。)については、同医師の指示通りに自宅で安静を保ったり通院するか不安があったため、これに配慮したものであって、原告個人との関係ではあり得ないものとまではいえないにしても、客観的な契約上の要件である「入院」該当性の根拠とすることはできないというべきである。
(3) したがって、本件入院が本件各保険契約における保険金ないし共済金の支払事由としての「入院」に該当するとは認められない。
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