「結婚にも契約書」 婚前契約書についての独り言

弁護士石井です。

「結婚にも契約書」という記事を読みました。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130208-OYT1T00876.htm?from=tw

結婚前に、夫婦間での金銭のやりとり等を決めておくことですね。
結婚契約書、婚前契約書などと呼ばれたりもします。

記事では

実家の帰省回数、
浮気した場合の慰謝料額などを

事前に決めておいたという事例が紹介されています。

このような契約書の作成を請け負う行政書士や弁護士もいるとのこと。
そういえば私の大学時代の同級生の弁護士が、このジャンルの本を出していましたね。

契約書の作成なので、うちの事務所でも対応可能ですが、そのような相談を受けたことはまだありません。

今の日本では、このような契約にはまだ抵抗がある人が多いのではないでしょうか。

多くの場合、結婚により経済的に不利益を受けるのは女性です。
出産という問題もあり、仕事が続けられなくなり、固有の収入を失う。
その後、離婚ということになれば、社会復帰のハードルは高い。
そのような立場の女性側の経済面を支えるために、このような契約をしておく、というのが一番のニーズだと考えられます。

しかし、まだ抵抗がある現在の状況では、結婚前に、このような契約を切り出すところまで行けるのかどうか。

「結婚してほしい」とプロポーズされ、
「いいわよ、ただし、この契約書にサインして」
と条件付きの承諾を出すのでしょうか。

このような条件付き承諾は、そもそものプロポーズを撤回されそうなリスクを含んでいます。

より晩婚化、少子化が進んでしまう社会的リスクすらあるでしょう。

この契約を男性側に抵抗感なく普及させるためには、
婚約指輪は給料の3倍
みたいな、「一体なにを根拠に言っているのか分からないキャッチフレーズ」で社会を洗脳するしかないでしょう。


「婚約指輪と一緒に婚前契約書を送るのが愛情の証」

厚木の弁護士事務所

このような社会になったら、うちの事務所でもデコレーション婚前契約書の作成を始めます。

記事では、契約書を見ると妻を大切にしたいという気持ちを忘れられずにいられる、という男性の感想も載っていますので、このような社会は近いかもしれません。

さて、このような契約ですが、気をつけなければならないのは有効性。

身分に関することは、当事者の間で決めたからと言って、何でも有効になるわけではありません。

公序良俗違反で無効にされてしまうこともあります。

愛人契約などが有名です。

東京地裁平成15年9月26日判決では、決められた金額を払えば離婚できる、という条項が無効と判断されています。

この有効性に気をつけておかなければなりません。

また、結婚時に前提にしていた事情が大きく変わることもあります。
事情変更の原則という一般法則で、契約時に前提にしていた事情が著しく変わった場合などには、契約の効力が変わる可能性もあります。錯誤無効も主張されそうですね。

とくに婚前契約では、このような主張がされる場面が多そうです。

帰省回数を決めたからといって、親の体調が悪くなったら、たくさん帰省しなきゃいかんでしょう。
別居した場合の生活費を決めたからといって、無職だったら払えないでしょう。

このような事態に備えて、あらかじめ一定の条項を決めておくことも考えられます。

たとえば、物価上昇が2%にとどまらず、ハイパーインフレが発生したら、どうするのか、など家賃の契約などでは景気変動条項を決めておくことがありますね。

さらに、結婚時よりも愛情が大きく変わった場合に、事情変更の原則を主張する人なども出てきそうです。

愛情がインフレなら良いですが、デフレスパイラル状態になったら、このような契約を解消したいところです。「愛情が婚姻時より80%以上減少した場合には、本契約は失効する。」
いや、まあ、こういうときにこそ、契約の出番な気もしますが。

厚木の弁護士事務所-厚木の弁護士

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