弁護士石井です。
相続放棄の判例をチェックする際、家系図をサクッとAIが作ってくれたらラクだなぁと感じました。
ただ、単純なプロンプトでは難しそう。
相続実務での家系図の重要性
相続関係の判例をチェックしていると、複雑な家系関係が登場することが頻繁にあります。
三代にわたる相続関係、養子縁組の繰り返し、離婚・再婚による血族関係の複雑化など、文章だけですぐにイメージできない関係性がありいます。
相続放棄では、「誰が相続人になるのか」「放棄によって次に誰に相続権が移るのか」を正確に把握する必要があり、視覚的な家系図は必須ツールです。
裁判所に提出する際には、Excelで作成していますが、これもAIが作ってくれるとラクですね。
ChatGptに雑に投げる
「複雑な家系関係をAIに整理してもらえば効率化できるのでは」と考え、まずは簡単なプロンプトで試してみました。
しかし、結果は散々でした。
まず、作りたかったのは、こういう関係図。

裁判所決定文の当事者の箇所を入れて家系図にしてもらうと、次のようなもの。

ChatGptが作ってくれた画像。デザインのテンプレートと文章から作ってもらいました。
AIは家系図の基本的なルールや表記方法を理解していないようで、血族関係と姻族関係の区別があいまい、世代の配置がバラバラ、兄弟と親子も区別されず、同じ当事者が2人いるという図に。
単に「家系図を作って」というだけでは、AIには何をどう表現すべきかの指針がないのです。
ChatGptって、図解画像をテキストで修正するのは苦手だと感じています。
「BとHは兄弟、HとCの間の子が、A、I、Dの3人ですので、修正して」と依頼すると

よりダメになり、文字化けが発生してくるという。
仕方ないので、決定を読みながら手書きで家系図を作成します。自分用なので、色々許してください

これをChatGptにキレイな画像にしてもらいましょう。

迷路みたいになってきました。
Claudeに雑に投げる
図解AIといえば、Claudeですね。ChatGptは進化したといえ、まだまだですね。
というわけで、Claudeにも雑に投げてみました。

解読するのが難しそうなバージョン1。
テンプレートを送っての再指示

ズレているのですが、概念は理解してくれたっぽいバージョン2。
ここから位置関係などの修正を求めたり、手書き図を送って指示したのですが、うまく反映されませんでした。
断念して、このClaudeバージョン2をパワポで修正しました。
SVG形式で出力させることで、後から編集しやすい形式での家系図を得られるのがClaudeの強みですね。
家系図作成AIサービス
この過程で、専用の家系図作成AIについても軽く調査しました。
いくつかのサービスが存在しているようですが、試すには至りませんでした。しっかり入力しなきゃいけないやつとかがあって、私のように、ザックリした文章で作ってもらいたいという希望は想定していないようなサービスでした。
まあ、2段階で整理させれば、そういうのも使えるんでしょうね。
家系図作成は本来、定型的なルールに基づく作業なので、AIが得意とする分野のはずです。しっかり探せば使えるのがありそうです。
まじめにプロンプトとプロジェクト
AIの実力が乏しいのではなく、私のザックリした指示がいけないのです。
ちょっと進化させるかと考え、相続関係図作成に特化したプロンプトを作り、いくつかの見本を入れたClaudeのプロジェクトを作りました。
たとえば、判例とかを読んでいて、次のようなものを視覚化したいとします。
「1)当事者等 ア Bは、昭和9年○月○○日に出生し、昭和47年7月3日にC(以下「C」という。)と婚姻したが、子供をもうけることなく、令和3年7月6日、死亡した。 イ 原告は、Cの妹であるD(以下「D」という。)の次男である。 ウ 被告らは、いずれも、別紙金融資産相続割合一覧表に記載の各持分を法定相続分とするBの相続人である。 (2)Bによる本件各不動産及び本件預貯金の所有 ア Bは、令和3年2月20日のCの死亡に伴い、Cが有していた本件不動産1のC持分全部(3万2300分の1600)並びに本件不動産2及び同3の所有権を相続により取得した(弁論の全趣旨)。」
このプロジェクトに、このテキストをいれると、視覚化してくれます。

少ない情報の中では、しっかり作ってくれていそう。これなら自分用には機能しますかね。たぶん、もう少し詰めればデザインも改善されるでしょうし、これをパワポで編集しても良いです。
AIによる周辺情報の補填
このClaudeプロジェクトで遊んでみました。
「以下の家系図を作成して 祖父:牛魔王 長女:チチ 長女の夫:悟空 長女の長男:ごはん 長女の次男:ごてん」
と入れてみて、ちゃんとできるかどうか。

レイアウトとかは微妙なのですが、勝手にドラゴンボールだと判断し、タイトルを設定、キャラクター紹介をして、ドラゴンボールの画像まで描いてくれました(どっちも星1つなんだけど)。
実際の出力結果と今後の可能性
現在のところ、出力は「微妙だが調整すれば使える」レベルですかね。
ドラゴンボールの例からすると、情報を追加すれば、家系図に盛り込んで記載してくれそうです。
基本的な関係性を素早く可視化し、それを叩き台として精緻化していく使い方では十分実用的です。
判例を読んだりする際には、相続関係以上によくあるのが当事者関係図です。
同じ方法で、これもパターン化できそうですね。
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