自分はこの仕事に向いていない、と思ったら

弁護士の香崎です。

先日、弁護士同士の会合(平たく言うと、飲み会)に出ました。
その際に、ある弁護士からこんな話が披露されました。

その先生は若い時、「自分は弁護士に向いていないんじゃないか」と真剣に悩ん
だことがあり、それを同期の弁護士数人で飲んでいる時に打ち明けたそうです。

そうしたら、そのうちの1人のAから、「何だよ、お前はまだいいよ。俺の方が向い

てないよ。」と言われたそうです。

すると今度はBが「いやいや、お前やAはまだいいよ。俺の方が向いてないよ。」
と言い出し、更に今度はCが「なに言ってるんだ、お前やAやBなんてまだまし
だ。俺が一番向いてないよ。」と、みんな真顔で言い始め、「自分は向いていな
い競争」のような状態になったそうです。

つまるところ、「自分はこの仕事に向いていないんじゃないか」という思い、迷
いは誰もが持つもので、同期と話したりすることで「何だ、みんな同じことを考
えて悩んでいんるんじゃないか」と分かり、心が軽くなるということです。

そして、その時「向いてない競争」をしたAさん、Bさん、Cさんは、いずれも今

でも立派に弁護士として大活躍しているということです。もちろん、この話を披

露した先生も、大変立派な弁護士として尊敬を集めています。

さて、この話を聞いてふと思いました。
私自身も、「この仕事に向いていないんじゃないか?」と思ったことがないわけ
ではありませんが、一瞬のことで、実はほとんど悩んだことがありません。
こう言うと、すげー、自信たっぷりじゃないか、と思うかもしれません。でも、そう

いうわけではありません。
私は企業勤めを長くした後でこの道に入って来たので、向いている、向いてない
なんて、考える余地が(年齢的に)ないのです。
「向いている、向いてないなんてどうでもいいこと。少なくとも自分は今はこの
仕事でメシを食っていかなければならないのだ。」というのが正直なところで、
こういう点に関してはほとんど迷いなく、目の前の仕事に取り組んでいます。
選択肢がないことの強みと言えば、言えないこともありません。もともと思考

が単純だからというのもありますが。

もっとも、今まで出会った人の中で、自分はこの仕事に向いている、天職だ、

などと考えている人は、滅多にいません。それぞれ何らか不満を抱えながら

も、時々自己満足的な充実感を覚えつつ、仕事をしています。そんなもんじゃ

ないでしょうか。あ、でも、平均すると会社員よりは弁護士の方が、自分の職

業に対する満足度が高いような気がします。

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