弁護士石井です。
小田原三の丸法律事務所の報道には驚きました。

弁護士会からも相談窓口の案内、Q&Aが出されています。
https://www.kanaben.or.jp/profile/gaiyou/statement/pdf/jouhouteikyou_qa_20251008.pdf
三の丸事務所といえば、長く小田原を代表する弁護士事務所という認識です。長い間、弁護士が10人以上も所属、裁判所の隣にビルを建てていたかと。
支部でも最も稼いでいる弁護士事務所の一つだと思っていました。顧問先とかもいっぱいいて、6億なんてポケットマネーから払えるんじゃないかというイメージを勝手に抱いておりました。
少し前に所属弁護士の人数が大幅に減っていると聞いて、代表弁護士の年齢からして引退に向かう流れを作っているのかと思っていたのですが、こんなことになっているとは。
報道の概要
神奈川県弁護士会は、10月8日、小田原三の丸法律事務所の代表社員弁護士(82)が、依頼者からの預かり金を事務所経費などに不正流用していたとして調査の開始を発表しました。不足金が約6億円に上るという規模とのこと。
一部の依頼者から返還の求めがあるものの、応じられていない状況だそうです。
預り金は、多数の遺産分割や遺言執行などに関するものとされています。
神奈川県弁護士会の対応
弁護士会は臨時相談窓口を設置しています。
https://www.kanaben.or.jp/profile/gaiyou/statement/pdf/jouhouteikyou_qa_20251008.pdf
弁護士会のQ&Aには破産手続きの話も出ており、事態の深刻さが伺えます。
Q&Aによる会計処理
Q&Aでは、直近3年ほど毎月数百万円から2,000万円を預かり金口座から報酬口座に移動しているとの記載があります。
法人の決算報告書では顧客預かり金が減っていないようなので、預かり金口座から出金しても顧客預かり金残高を減らしていないという会計処理をしている様子が見て取れます。
つまり、実際の預かり金口座の残高と、会計上の預かり金残高が一致していないという状態が続いていたことになります。
弁護士の預かり金管理
弁護士の不祥事で、この預かり金の不正使用というのはよくある類型です。
しかし、個人的には会計処理をどうしているのか、非常に気になります。税理士がついていないとか、身内の税理士ということでしょうか。
通常、預かり金口座の残高と会計上の預かり金残高は一致しているはずです。
ちょうど、うちの弁護士法人も、税理士から9000円ずれているという指摘が入って確認しています。普通の税理士なら指摘するはずですよね。
そんなこともあり、個人的には、預り金はあまり持ちたくないという気持ちです。相続以外でも、法人破産とか交通事故などでそれなりの金額を預かることもあるのですが、正直、怖いので早く引き継ぎなり、返金なりで事務所の預り金口座からなくしたい。
そもそも、会計処理をしていると、数字が合わないこと自体が気持ち悪いんですよね・・・
経費の支払いという流用理由
弁護士の預り金不正利用とか横領事案で、事務所経費の支払いにあてたという理由を聞くことが多いです。
当然、どんな理由でも許されるわけではないのですが、経費支払いに足りなかったということは、基本的には、利益が出ていなかった、赤字だったということになりますよね。
一般的な会社であれば、資金が不足し、利益も出ない見込みなら経費を削減、リストラという対応になるのだと思うのですが、法律事務所ではそのような対応が難しいのでしょうかね。
法律事務所特有の問題としては、事件処理が長引くものも多く、勤務弁護士をリストラすると、対応してもらっていた事件処理を誰がするのかという問題がありそうです。
勤務弁護士がいっぱいいて、経費削減のためにリストラしようとすると、担当事件の対応をどうするのかという問題が出てきそうです。代表弁護士が全部やるわけにもいかないので、リストラできずに、経費を削減できず、支払いに困って手を付けるという感じでしょうか。
しかし、弁護士1人の事務所でも、経費支払いという理由で問題を起こしているケースも見かけます。こちらは、生活費と同じで、一度、レベルを上げてしまうと下げにくいという問題なのでしょうか。
弁護士の売上には波があるとしても、ある程度の長期間の見通しは立てられるはずなんですよね。であれば、何らかの対策ができたはずなのではないでしょうか。弁護士の脳は、リスク対応のため、どちらかといえば悲観シナリオ寄りであり、根拠なき楽観シナリオには傾きにくいと思うんですよね。
そのため、経費支払いにあてたという理由には、いまいち、納得できない感じなんですよね。
弁護士の最後
弁護士人生に、幸せな最後ってあるのでしょうかね。
キレイな形でスッキリして終われる未来が見えないんですよね。破産も犯罪も死亡も避けたいけど、60歳で定年って感じでもない。引退したらボケそうな気しかしない。
全事件が同時に終わってくれれば良いのですが、そんなことはありえない。
勤務弁護士の退職もそうですが、どこかで中途半端で一気に終わるか、少しずつ縮小するかということになりそう。少しずつ縮小するとなると、新規事件は受け付けずに、担当事件の解決を待ちながら、事務所を借りている場合には解約の予告とかを出す必要があります。担当事件が数件なのに、事務所を維持する形になるのか、自宅兼事務所みたいにするのか選択することになりそうです。

この本では、自分が働けなくなった場合のことなんて考えないという弁護士もいるのですが、みなさん、結構、最後を考えている様子。
この事件はこういう解決になりそうという見通しを立てて進めているのに、途中で引き継いで結果を確認できないのも何か嫌なんですよね。
これらを解決するのは、電脳化しかないような・・・
預り金に関する相談
なお、当事務所では、こちらの弁護士事務所の預り金返金に関する相談は受け付けておりません。
色々と利害関係が出てしまいそうですので、ご相談自体が受けられないので、ご了承ください。
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