特定調停後の過払い金請求についての最高裁判決

借金問題

弁護士石井です。

特定調停と過払い金についての最高裁判決が出ました。平成27年9月15日。

報道では、
最高裁「過払い金 調停成立後も請求可能」(NHKニュース)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150915/k10010235591000.html

などとされています。

一見、借主側には有利な判決のようではあります。

 

事案としては、

借主が高金利による返済ができず、特定調停の申立

44万の債務を支払う内容で特定調停が成立。ホントはこの時点で234万の過払いだった。

特定調停では「何らの債権債務のないことを相互に確認する」という清算条項も付けられた。

特定調停どおりに返済した後、全取引を利息制限法に従って計算すると過払いであることが判明したため、過払い金の返還請求をした

というものです。

過払い金があるのに、債務があることを前提に、合意をしたり、和解をしたり、今回のように特定調停を成立させてしまうことはあります。

そのような場合、借主側としては、合意は利息制限法違反で無効、錯誤で無効などと主張し、合意がなかったものとして、過払い金の請求をします。

このような請求を認める裁判例も多数ありました。

 

ただ、合意が有効だとすると、借主は過払い金も放棄したものとされそうです。貸金業者側からは、そのような主張がされます。

「過払い金があるのに、借金を返す」という内容の合意をしたわけですから、過払い金の請求なんてしないよね?

というのが貸金業者の主張。

今回のように、「何らの債権債務のないことを相互に確認する」という清算条項がついていれば、なおさらです。

 

今回の最高裁判決では、特定調停をしても、過払い金の請求はできる、と判断しました。

「本件清算条項に,A取引全体によって生ずる被上告人のAに対する過払金返還請求権等の債権を特に対象とする旨の文言はないから,これによって同債権が消滅等するとはいえない」

特定調停をしても、その時点での過払い金請求権はなくなりません。

この点は借主に有利な判断。

 

ただ、この最高裁判決は、特定調停自体は、過払い金を対象にしていないから、過払い金をなくすという内容じゃないから、無効じゃない、とも判断しています。

ここはかなり微妙で、今後の過払い金裁判でも揉めそうな気がします。

判決文を読んでいくと、うーん。

まあ、とりあえず、合意してもなくならないって所は、有利だから、ないよりはマシか、くらいの判決な気がします。いや、下級審でも多数の勝訴判決があったんだから、ない方が良いかな・・・。

 

そもそも、この最高裁判決は、高裁までは借主側の主張が認められて、調停が無効とされていたものを、貸金業者が上告して弁論が開かれた事件なんですよね。

貸金業者側の上告代理人を見たら、私の同期で、同じ中央大学で、同じ研究室に所属して、司法試験の口述試験の最中に一緒に食事してた方がいるような気がしますが見なかったことにして旅に出ます。

 
厚木の弁護士事務所 相模川法律事務所

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