医療ネグレクトと親権停止、職務代行者選任の審判前保全処分

家庭の法と裁判 家事

弁護士石井です。

医療ネグレクト関係での裁判例紹介です。

東京家裁平成27年4月14日決定が「家庭の法と裁判5号」で紹介されていました。

 

家庭の法と裁判

未成年者について手術の必要があるのに、親権者が宗教上の理由で輸血に同意しないというケースで、児童相談所長が申立人となり、親権停止の申立をするとともに、親権停止及び職務代行者の選任を求める審判前保全処分を申し立て、それが認められたというケースです。
親権者の意見を聴かずに決定がされている点で珍しいと解説されています。

 

以前は、このようなケースで、親権の停止ではなく、親権喪失を申し立てていたのですが、親権を失わせるというのは重いです。

法改正により、この親権「喪失」よりも要件や効果が軽い親権の「停止」制度ができたため、医療行為に同意しない、という医療ネグレクトでは、親権停止の方が使われると言われています。親権停止の場合には、一時的です。

 

医療行為の中には、緊急な手術などもあるため、親権を停止して良いかどうか、審判の判断を待っていては間に合わなくなるケースも想定されます。

そのような、本当の審判(本案)の判断を待てないときには、審判前の保全処分もあわせて申し立てることが多いです。緊急性があるときには、先に、仮の判断をしてしまうのですね。

 

この審判前保全処分では、家事事件手続法107条で、審判を受ける者となるべき者の陳述を聴くことが必要とされていますが、但し書きで、「その陳述を聴く手続を経ることにより保全処分の目的を達することができない事情があるときは、この限りではない」とされています。

今回の決定でも、親権者の陳述を聴かずに、保全処分が認められ、親権者の職務執行停止が認められています。

解説では、未成年者の病状や手術予定日などを考慮したものではないか、とされています。

決定の理由の中でも「親権者らの陳述を聴く時間的余裕もない」とされていますので、おそらくそうなのでしょう。

 

 

厚木の弁護士事務所 相模川法律事務所

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