経営者保証ガイドライン ~その背景~

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経営者保証ガイドラインというものをご存知でしょうか。

近年話題とは聞きますが、債務相談で扱ったこともほとんどなく、世間で話題となっているのか半信半疑に思っています。

少なくとも、研修会が開催されたり、書籍が刊行されたりと弁護士業界ではホットなトピックではあります。

今回は、策定の背景から、ガイドラインの概要を解説していきます。

 

バブル崩壊から不良債権処理へ

経営者保証ガイドライン制定などの背景には、不良債権処理の副作用などがあるそうです。
「あるそうです」と伝聞で書いた理由は、バブル崩壊が約30年前のことであり、私が当時を知らないからです。
また、バブル崩壊前に銀行や監督官庁に勤めていた方は概ね50代以上であり、不動産市場が過熱する前の融資業務に関与していた方となると若くても定年前後になる計算です。
そのため、過去の融資実務として語られることがどこまで事実であるかは注意が必要でしょう。

とはいえ、不良債権問題が存在し、国が主導して不良債権の処理を進めていたことは間違いありません。
その際、金融庁は、新たに不良債権が発生しないよう、金融機関に対して確実な担保を取らせる方針をとりました。

現在の銀行実務の確立

その結果、銀行の融資は経営者の保証が当たり前、加えて不動産への抵当権設定か保証協会の保証がつけられているのが通常になりました。
最近の法人破産では、金融機関の債権は保証協会が代位弁済され、同時に破産た代表者が保証人であることがほとんどです。
金融機関は保証協会からの代位弁済で貸倒れの損失を受けず、融資窓口担ってしまっている印象も受けます。
また、代表者が個人的に消費者金融などから借入れを行い、運転資金に充てていることも少なくありません。

国が目指す方向

このような実情を受けて、金融庁の監督方針も変化しています。
確実な担保を求めていた検査マニュアルを廃止し、それに代わるマニュアルは制定しないそうです。
金融庁の方針は、担保に依存せず、企業の将来性を評価しての融資を復活させることだそうです。
金融庁の担当者が講演会で強調していたのは、不良債権問題が浮上する前の融資実務に戻すだけであるということでした。

具体的には

この方向に向けて、検査マニュアル廃止のほか、経営者保証ガイドラインの策定、債権法改正における保証要件の厳格化などの政策がとられています。
経営者の観点からは、経営者保証ガイドラインの内容がわかりやすいでしょう。
経営者保証ガイドラインは、①経営者保証を伴わない融資の促進、②既存融資の適切な見直し(保証の解除)、③企業倒産時における保証債務の整理の3つに分けられます。

①と②は、経営に問題がない時期において、保証に依存しない融資への移行を促すものです。
無保証とするためには、会社財産と個人財産との区別といった条件を満たす必要がありますが、本来あるべき経営をしていれば満たされるものです。
いわば、金融機関と経営者に、正常な経営と融資を求めているといえるでしょう。

③は、破産や個人再生といった法的整理によらない保証債務の処理を目指すものです。
破産を回避する余地があるため、「自宅を残せる」などと宣伝されることもあるようです。
ただ、ガイドラインの対象は銀行や信用金庫といった金融機関であり、貸金業者などからの借入れは対象とできません。
そのため、代表者に保証以外の債務があると法的整理をせざるを得ず、ガイドラインを使用できる事案はあまりありません。

どのような場合に経営者保証ガイドラインを用いて保証債務を整理できるかについては、別の機会に記事にしたいと思います。

弁護士 坂本 学

 

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