仕事による病気

弁護士の香崎です。

仕事に忙殺されている中、ある日突然病気が判明することは、世の中珍しくない
ことです。そうなった場合、仕事の忙しさ(精神的、肉体的ストレス)がその病気

の発症の原因になっていたといえれば、労災給付を請求したり、雇い主に損害
賠償請求をしたり、といった手段をとることが考えられます。

この、仕事と病気との因果関係を証明するのは、本来はそんなに簡単なことでは
ありませんが、労働基準法や関係省令により、労働者側の証明の負担が大きく軽
減されています。

それでも、例えばもともと慢性疾患を抱えていた人が、業務多忙の中でその疾患
が悪化した場合、「そりゃ本人の不養生だ」等ということで、上記のような請求を否

定されることもあります。そのような事案で、私の印象に残っているのが、最高裁

で平成16年9月7日に出された、「神戸労基署長事件判決」と呼ばれる判決です。
(私が担当した事件ではなく、多くの書物等で紹介されている有名事件です)

詳細は省きますが、37歳の男性が、海外出張中にせん孔性十二指腸潰瘍を発

症し、出張先の香港で開腹手術を受けたという事案でした。労災給付の請求につ

き、労働基準監督署等の行政機関に3回斥けられ、その後も地裁、高裁と敗れな

がら、最高裁で逆転勝訴して、平成元年の発症から数えると実に約15年闘い続

け、給付を勝ち取ったものでした。

判決の内容も去ることながら、あきらめずに闘い続けたことが、とても印象に残っ

ています。

労働者は基本的には立場が弱いので、下手をするといいように会社に使われて

泣き寝入りで終わり、という結果になる恐れもありますが、主張できる権利は主張
していきたいものだと思います。

以上、ただの独り言でした。

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