弁護士石井琢磨です。
建築会社から、
「お客さんから、こういう仕様で頼まれているんだけど、危ないんだよね。
でも、お客さんの言うことだし、そのまま進めちゃって大丈夫ですよね?」
という相談を受けることが結構あります。
客の言うことだけを聞いていれば、自分に責任がないか、という話です。
法的には、建築会社には、専門家としての責任があると考えられています。
したがって、素人である客の意見を踏まえつつも、専門家としてアドバイスをする義務があります。
『建築工事請負契約における瑕疵担保責任と損害賠償の範囲』
という本で触れられている事例を紹介しましょう。
客 「ロフトに上がる階段に手すりをつけちゃうと、デザイン的にイマイチだから、手すりなしでいいよ」
建築会社 「でも、危ないですよ」
客 「いいからいいから」
→手すりなしで完成。
その後、この家に遊びに来た子供が、階段から転落。
建築会社には、この子供のケガについて、損害賠償責任があるという話です。
その根拠としてあげられているのが、
1 最判平成19年7月6日
建物というのは
「建物利用者や隣人,通行人等(以下,併せて「居住者等」という。)の生命,身体又は財産を危険にさらすことがないような安全性を備えていなければならず」
とされています。
2 最判平成23年7月21日
「開口部,ベランダ,階段等の瑕疵により建物の利用者が転落したりするなどして人身被害につながる危険があるとき」
は、建物の基本的な安全を損なう瑕疵があるという判断です。
建築会社は、注文主だけではなく、その建物の利用者や通行人の安全まで配慮した建物を建築しないといけないのですね。
注文者が「建てて」と言っても、柵のないベランダとか、落とし穴のある階段などは作っちゃいけないのです。
建築会社の人は気をつけてくださいね。
また、他の業界でも専門家と言われそうな人は同じ論理で責任を負わされる可能性がありますので、ご注意を。
建築工事請負契約における瑕疵担保責任と損害賠償の範囲 | |
秋野 卓生
新日本法規出版 2014-03-20 |
コメント