弁護士石井です。
相続争いで、よくポイントになるのが、相続人の範囲と遺産の範囲です。
ここに争いがあると、そもそも「どう分けるか?」という話し合いができないからです。
遺産分割の話し合いは、
・誰との間で
・何を
どう分けるか、というものなのです。
遺産分割調停などでは、この前提に問題があると、裁判で確定させるよう指示されることもあります。
遺産の範囲の問題で、書籍の中で取り上げられている裁判例を紹介。
遺産に株式が含まれていたところ、相続人の一人が勝手に売ってしまったというケースです。
遺産分割では、預貯金のような金銭債権は、原則として、相続発生時に当然に分割されますので、
「どう分けるか?」という話し合いからは除外されます。
これに対して、当然に分割されない財産は共有のような扱いとなります。
これをどう分けるかは話し合いが必要です。
株式も当然には分割されません。
しかし、これを相続人の一人が勝手に売ってしまって、現金化した場合の問題です。
相続人の一人が他の相続人に無断で売却することは不法行為となり、売却代金のうちの自分の相続分を損害賠償請求できるのではないかと争われたケースです。
福岡高裁那覇支部平成13年4月26日判決は、
自分の法定相続分に相当する部分の損害賠償請求権は、遺産分割の話し合いとなる対象からは外れ、分割協議を待たなくても、請求できると判断しています。
相続人が遺産を勝手に処分という事態は、よくありますので、その際に参考になる内容です。
判例にみる相続人と遺産の範囲 | |
仲 隆 浦岡 由美子
新日本法規出版 2013-05-22 |
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