遺留分減殺請求に対して、個別の財産についてのみ価額弁償

弁護士石井です。

遺留分と価額弁償の話です。

今回は、遺留分減殺の対象とされた個別の財産について価額弁償をすることができるか、という問題を取り上げます。

遺留分とは相続人に最低分の取り分として認められた権利。

これが遺言や生前贈与により侵害されてしまうことがあります。

たとえば、子のうち1人に対してだけ全ての財産を与えるような遺言を残した場合です。

このような場合、他の相続人は、遺留分を侵害されたと請求することができます。

この請求をすると、自分の遺留分部分について共有関係になります。

事例で見ていきましょう。

相続財産が1000万円の不動産と1000万円の株式。
相続人は子4人。遺言がなければ、本来4分の1である500万円ずつの取り分。
ところが遺言で1人に対して全財産を相続させたとします。

すると、他の3人の子は、何ももらえなくなるので遺留分を侵害されたことになります。
この場合の遺留分は8分の1です。
3人の子は、「8分の1を戻せ」という遺留分の請求ができます。

ただ、この遺留分の請求は、現物で分けることが前提です。

つまり、不動産と株式のそれぞれについて8分の1を求めることになります。
わけられないものは共有となります。

これに対して、遺言でもらった側の子は、「金で解決しよう」と言うことができます。
これが価額弁償。

遺留分の請求をしてきた子に対して、8分の1相当額である250万円を払うことで、不動産と株式を共有させないことができます。

ただ、金で解決しようにも、現金がない場合があります。

その場合、遺言でもらった側の子は、「せめて株式だけは自分のものにしたい」と考えることがあります。

このように考えた場合、250万は無理だけど、125万円だけ払って株式は自分のものに、不動産は共有でいいや、という対応が可能かどうか、争われた事案があります。

最高裁平成12年7月11日判決では、「減殺された贈与又は遺贈の目的たる各個の財産について、価額を弁償して、その返還を免れることができるものと解すべきものである」として、このような対応を認めています。

遺留分の制度は、遺留分権利者が特定の財産を取得することを保障しているものではないと判断したものです。

厚木の弁護士事務所-厚木の弁護士

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