共有者の占有

弁護士の石井です。

不動産などを共有している場合の法律関係についてまとめてみました。

共有物については、各共有者が、共有物の全部について、持分に応じて使用できるものです。
100坪の土地のうち、3分の1を共有している場合、33坪だけ使用できる、というわけではなく、全体の100坪を使用できます。
共有者 A 100坪使用可能
     B  100坪使用可能
     C  100坪使用可能

共有物をどう使うかについては、共有物の管理行為であるとされ、過半数で決められることになります。
ただし、少数の持分を持っている人が、目的物をすでに占有している場合には、多数決でこれを覆すことはできません。

共有者 A 100坪占有
     B,Cが多数決でも覆せない。

最高裁判決でも、少数の持分の人が既に占有している場合には、多数の持分の人が少数持分者に対して、明渡を当然に請求できるものではないとしています。

共有者 A 100坪占有
     B,Cから明渡請求も当然にはできない。

この流れで、共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は、共有者の占有を承継したものとされるため、この第三者に対しても明渡請求を当然にはできません。

共有者 A→Dに100坪占有させる
     B,Cから明渡請求も当然にはできない。

このままだと、占有ができなかったB,Cのような共有者はかわいそう。

一応の救済策として
A→Dの占有が、賃貸借契約で、DからAが賃料をもらっているような場合には、
「他の共有者は、賃貸をしている共有者の持分を越える部分の不当利得返還請求をすることができる」とされています(最判昭和63年3月31日)。

ただ、これが賃料を発生させる賃貸借契約ではなく、無償で貸す使用貸借だと賃料が発生しないので、請求が難しくなります。
相続がらみで一人の相続人が占有しているような場合、この使用貸借契約を認定することが多いです(最判平成8年12月17日など)。

共有物は占有している共有者の力が事実上とても強いのです。

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