弁護士石井です。
財産開示手続きでの逮捕者の報道がありました。
まあまあ、珍しい話です。
財産開示とは
裁判所が行う「財産開示」手続きがあります。
この手続きは、債務者が債務を履行しない場合に、債権者が債務者の財産状況を把握するために用いられるものです。
裁判所の判決が出ても債務者が支払をしない場合などに、民事執行法で用意されている手続きです。
財産開示で逮捕されたとの報道内容
福岡地裁小倉支部で「財産開示」手続きが行われたものの、債務者が出頭命令に応じなかったため逮捕されたという報道です。
この事件は、北九州市のレンタル衣装店「みやび」が成人式の衣装代金約23万円を請求したことに始まります。債務者は、2022年9月に福岡地裁小倉支部から「財産開示」手続きのために呼び出されましたが、正当な理由なく出頭しませんでした。
これを理由に、民事執行法違反の疑いで逮捕されたというものです。
2020年に施行された改正民事執行法では、呼び出しに応じない場合に厳しめの刑事罰が導入されています。
「財産開示」手続きは、債務者が債務を履行しない場合に、裁判所が債務者の財産状況を明らかにするために行う手続きです。債権者がこの手続きを申請し、裁判所が債務者に対して財産の詳細を開示するよう命じます。
財産開示手続きの主な目的は、債権者が債務者の財産状況を把握し、適切な回収手段を講じることです。
期日があれば債務者は呼び出され、自身の財産について情報開示をしなければならないルールになっています。
情報を知ることで、債権者は債務の回収可能性を高めることができます。
財産開示の手続き
財産開示手続きの流れは以下の通りです。
1. 申立て: 債権者が裁判所に対して財産開示手続きを申立てます。
2. 出頭命令: 裁判所が債務者に対して、特定の日に裁判所に出頭するよう命じます。
3. 財産の開示: 債務者は出頭し、裁判所に対して自身の財産状況を詳細に開示します。
4. 記録の作成: 裁判所は開示された情報を記録し、債権者に提供します。
財産開示での債務者の義務
民事執行法第199条第1項には、以下のように定められています。
> 第199条第1項
> 開示義務者(略)は、財産開示期日に出頭し、債務者の財産(略)について陳述しなければならない。
この条文により、債務者は裁判所に出頭し、自身の財産について陳述する義務があります。
出頭命令に従わない場合の罰則
従来、財産開示手続きに呼び出されたのに出頭しない場合、過料という行政罰が課されるのみでした。しかし、法改正が行われ、出頭命令に従わない場合に懲役刑が新設されました。
> 第213条
> 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
>
> 第5項
> 執行裁判所の呼出しを受けた財産開示期日において、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓を拒んだ開示義務者
この改正により、出頭命令に従わない債務者に対する罰則が強化され、手続きの実効性が高まったとされていました。
財産開示手続きのメリット
財産開示手続きを通じて、債権者は以下のメリットを享受できます。
– 債務者の財産状況を詳細に把握できる
– 債務者が隠している財産を見つける可能性が高まる
– 債務の回収可能性が向上する
財産開示の実効性が上がる?かも
財産開示手続きは導入されたものの、実効性が乏しいと言われていました。
そうすると、裁判所で民事裁判を起こし、判決をもらっても紙切れになってしまいます。
厳しい刑事罰が導入されたものの、実際に刑事手続が進めてもらえるのか疑問もありました。
しかし、今回の報道のように、逮捕までされる事例が増えれば、無視しても良いと考える債務者は減り、
多少は、債権回収に役立つようになることが見込まれますね。
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