歌舞伎町弁護士

歌舞伎町弁護士 消費者問題

弁護士石井です。

「歌舞伎町弁護士」という本を読みました。

当事務所でも風俗関連トラブルの相談を受けることはありますが、そこに振り切るのはすごいですね。

「歌舞伎町弁護士」というブランディング

まず印象的だったのは、著者の若林弁護士の「歌舞伎町弁護士」というポジショニング。

一般的な法律事務所では敬遠されがちなナイトビジネス分野に特化し、「ナイトビジネスに足を踏み入れた、すべての人々」をクライアントとして受け入れる姿勢は、振り切り方がすごいです。

デリヘル本番トラブル

本書で興味深かったのは、デリヘルでの「本番行為」を巡るトラブル。

女性キャストが客から強要されたと主張し高額な示談金を要求する事件。

2件の類似案件で、女性キャストの「ユウ」と店が美人局を仕掛けている可能性を疑う話です。

同じキャストが同じような被害を訴え、警察の担当者の対応も同じ。いかにも不自然。

ただ、事件内容からして、裁判でガッツリ争える人が少なく、多少のお金なら払って示談で済ませたいという相談も多いです。

こういう話は、神奈川でも聞くんですよね。

ああ、「またこの店か」と感じる相談も多いですよ。

風俗トラブルに遭った人は、このエピソードだけでもチェックしておくと精神的に良いはず。

リアルな事件事例から見える業界の実態

本書では、その他にも、痴漢冤罪事件、知的障害者からの財産収奪事件、DNA鑑定を巡る案件など、ナイトビジネス関係で様々な事件が紹介されています。

若き風俗王のエピソードを詳細に書けているのも、著者のナイト人脈の広さによるものでしょう。

2025年風営法改正の影響

本書では、2025年の風営法改正についても詳しく解説されています。

悪質ホスト問題を受けた罰則強化、スカウトバックの禁止、色恋営業の禁止の明確化、グループ店舗への連帯責任導入など、大幅な規制強化の話です。

特に懸念されるのは、適法に営業している事業者への過度な影響です。スカウトバックの一律禁止により人材確保が困難になったり、グループ店舗への連帯責任により1店舗の問題で全店舗の営業許可が取り消される可能性があるなど、業界全体の萎縮につながりかねない内容となっています。

規制しすぎると「地下活動化」になるリスクがあり、禁酒法時代のマフィア台頭と類似した問題になるかもしれないとの指摘もあります。

ジン法律事務所弁護士法人では、悪質ホストからの脅迫で借金を背負い自己破産した女性などの事件もあり、規制方向はやむを得ないと感じていますが、立場による意見の違いは、AV新法のときと似ている構造だと感じます。

弁護士として感じること

この本を読んで最も考えさせられたのは、弁護士の役割についてです。

若林弁護士は自身を「正義の味方」ではなく「個別の依頼者の味方」と位置付け、客観的に良いか悪いかではなく、依頼者の置かれた環境や立場を理解してその主張を法的に構成することの重要性を強調しています。

この姿勢は、弁護士として非常に大切なものでしょう。

世間から偏見を持たれがちな分野であっても、そこには生身の人間がいて、それぞれに事情や想いがあります。

人それぞれに正義がありますしね。

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