弁護士石井です。
最近、ビットトレントを利用したアダルト動画の違法ダウンロードに関する発信者情報開示請求が急増しているとのこと。

こちらの記事によれば、東京地裁では、発信者情報開示命令の申し立てが2024年度に2454件あり、「このうち大半が、ビットトレント利用による著作権侵害を主張する事案だ」とのこと。
開示請求で個人情報がわかると、その後は、弁護士から通知が届きます。
ビットトレントについては、2年前にブログで取り上げました。
当時は、PDFファイルを読んでくれるAIが目新しかったんですね。もう化石です。
さて、ビットトレント関係では、高額な示談金を請求されて不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
今回は、このような状況に直面した際の適切な対応方法について解説します。
ビットトレント関連の発信者情報開示の現状
発信者情報開示請求の急増実態
東京地裁の知財部への発信者情報開示命令の申し立ては、2024年度に2454件に達しました。
ベテラン裁判官によると、このうち大半がビットトレント利用による著作権侵害を主張する事案だとのことです。
この背景には、違法ダウンロードで損害を受ける制作会社が、調査会社に依頼するなどして監視を強化していることがあります。
2023年に発信者情報開示の判例を調べていたところ、新しいものは、かなりビットトレント関係だったので、大半がというのも納得です。
最近、通信会社の代理人として発信者情報開示事件に関与したところ、開示請求側の代理人先生は、非常に忙しそうでした。裁判所の担当部署とも、よく話が通じているようで、期日設定が何分刻みみたいな感じでしたね。
大量に事件依頼を受けていることが推測されます。
ビットトレントの特徴と問題点
ビットトレントは国内で数万人が利用しているファイル共有ソフトで、大容量のデータを手軽に送受信できるのが特徴です。
しかし、映画やゲーム、特にアダルト動画などのデータのダウンロードは著作権侵害に問われる可能性が高く、制作会社側の監視が厳しくなっています。
著作権を持っている人が、大量に開示請求しているのが最近のトレンドです。
名誉毀損とかの開示請求だと、まあ、個別事情を色々と記載するなどしてそれなりに大変なわけですが、著作権侵害で大量に開示請求するのは、おそらくそこまで手間ではないのですね。
示談金請求の実態と相場
裁判で認められる適正な相場
上記記事では、「裁判で認められる示談金の相場は1本あたり数万円程度だが、数十万円規模の高額な示談金を請求されているケースがあるという。」とされています。
まあ、裁判で認められるのが示談金という表現は微妙な記載ではありますが、著作権侵害の損害賠償請求裁判だと、損害額の算定が争点になることは多いです。
その結果、数万円ということもありえます。
損害額の算定基準
裁判所で認定される損害額は、以下の要素を考慮して算定されることが多いです。
- アダルト動画1本あたりの販売価格
- 実際の経済的損失
- 侵害の態様や期間
- 制作会社の実損害
これで、1本あたり数万円程度とも言われたりすることも。
過大請求との区別
数十万円を超えるような請求は、裁判で認定される金額を上回る可能性が高いともいえます。
しかし、裁判を起こされて、裁判所から訴状が届き、家族が開いちゃって、そこに動画の記載とかされていると恥ずかしいですね。それを避けたくて、何とか数十万円を準備して示談としている人もいるでしょう。
他の事件でも、裁判所での認容見込額より高い金額を内容証明で請求することはよくありますが、特に裁判を避けたがるため示談が成立しやすいのは性的事件の構造ですね。
適正額での提案交渉
では、裁判で認定されそうな金額、つまり1本あたり数万円程度を基準として、適正な金額での示談を提案したところで、業者側が示談に応じてくれるかというと微妙です。
もちろん提案し、交渉し、示談ができれば良いでしょう。
しかし、相手は大量請求しているシステムで動いていると推測されます。個別に、このひとは可愛そうだから減額してあげよう、という判断をしているとは考えにくいです。
だとすると、交渉を持ちかけられても、一律、難しいと回答してきそうなものです。
相場を送金した場合の対応
この種の事件での問題は、弁護士に依頼すると弁護士費用がそれなりにかかり、ならば業者提案で示談した方が安かったともなりやすい点ですね。
弁護士も人が動く以上、コストがかかってきます。もちろん、弁護士に依頼して示談できればベストなのですが、上記業者のシステムだと減額交渉がうまくいく保証もありません。
このあたりを考えると、現実的な解決として、裁判で認められそうな金額だけを一方的に支払って裁判を起こされないよう祈るという選択肢があります。
他の事件でも同じような構造ですが、全く支払がないなら裁判を起こそうとしている人でも、一定の支払いがある場合には躊躇する可能性があります。
しかも、裁判だと数万、示談だと数十万というのが実態である事件の場合、数万の支払があれば、裁判を起こしても、請求棄却になり、時間と費用をかけるメリットが全くないことになります。
法的にしっかりした示談にはなりませんが、裁判を起こされるリスクは下げられる行為であるのは間違いないでしょう。


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