弁護士石井です。
平成27年4月15日の松戸簡裁判決が話題になっています。
報道によれば、NHKの受信料請求裁判で、契約書の筆跡が、被告の男性のものでも家族のものでもなかったということで、受信契約を締結したとは認められないと判断したとのことです。
この判決をみて、「受信料を払わなくて良くなった」という声もありますが、一つの簡裁判決ですので、そこまで言い切るのは危険です。
NHKの受信料裁判といえば、平成25年6月27日の横浜地裁相模原支部の判決では、裁判所の判決をもって契約成立、遡って受信料支払義務がある、とされました。
それ、契約っていうのか。
NHKの広報によると、その控訴審では、さらに、NHKが契約を申込み、相当期間が経過すれば契約が成立すると判断されたようです。
https://www.nhk.or.jp/pr/keiei/otherpress/pdf/20131030.pdf
しかし、その後、別事件で、東京高裁は、契約成立には視聴者の承諾が必要と判断しました。
このように、高裁の判断はわかれています。
今回の松戸判決は、そんな状況で、個別の契約を証明しようとしたところ、証明できなかったという事件ですね。
法律では、視聴者に契約義務を認めています。受信料の支払義務を直接は認めていません。契約に基づき、支払義務が発生するのです。
そのため、①契約をしている視聴者に対しては受信料の請求を、②未契約の視聴者に対しては、契約しろという請求をするのが筋です。
①の際に契約を証明できなければ、請求が棄却されるのは仕方がありません。
ただ、契約の証明自体は、契約書によらなくても(口頭でも)良いものが多いです。諾成契約と呼ばれます。
というわけで、契約書に署名していないから、受信料払わなくていいぜー、と言い切るのは危険かと思います。
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