投資詐欺とロマンス詐欺の被害回復:23条照会変更

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弁護士石井です。

弁護士会から、23条照会に関する手続きが変更になるという案内が来ました。

これは投資詐欺やロマンス詐欺の被害に対する損害賠償請求に関連する場合です。

「近時、ロマンス詐欺等の被害救済事案において、一部の弁護士によるインターネット広告等を通じて遠隔地から委任契約をした依頼者が、回収見通しが低いことを理解しないまま現実の回収見通しに見合わない高額な弁護士費用の支払等をして二次被害を受ける事例が増えています。
深刻化する同種事例に関して各関係者から寄せられている情報を踏まえると、かかる事案では弁護士自身が依頼者に対して面談や説明を十分行わずに、弁護士ではない者等の主体的な関与の下、定型的に実施された凍結口座情報に関する23条照会等が高額な弁護士費用の返還拒絶の正当化根拠として利用されるおそれも否定できない状況と考えられます。
このような状況等を踏まえ、ロマンス詐欺等(ロマンス詐欺、投資詐欺又はこれらに類する事件)の被害金等の回収を受任事件とする23条照会時に、申出理由、同種申出件数、申出態様その他の状況を踏まえ、受任事件の依頼者の意思確認等が相当と考えられる場合には、照会手続会規4条4項ないし当会の調査権限等を規定する各法規に基づき、場合によって依頼者との面談や意思確認状況等について一定の報告書のご提出を個別にお願いしておりますので、お知らせいたします。」

23条照会とは

23条照会とは、弁護士会を通じて銀行口座名義や携帯電話番号の情報を取得する手続きです。
詐欺被害などでは、送金方法や連絡手段に関し、道具を提供した名義人に対する請求が検討されます。これらの情報がわからないため、情報を持っている機関に照会し回答をもらう流れです。これで相手が特定できるというわけです(銀行の名義人の)。

今回の通知では、詐欺被害の23条照会手続きでは、弁護士会から依頼者への直接確認、場合によっては面談が実施される可能性があるとのこと。当然、その分、時間がかかることに。

詐欺被害回復の広告に注意

これは、最近、問題視されているロマンス詐欺において、被害回復の可能性が極めて低いにもかかわらず、「回収確率が高い」と広告して高額の着手金を取る弁護士事務所が出ていることを理由とするようです。

非弁っぽいこの手法は過払い金の大量集客事務所と似た印象を受けます。広告をかけて、似たようなサイトで集客する方法ですね。

東京の弁護士会では、かなり前に、こうした手口に注意を促す動きがあり、全国的に各弁護士会も注意喚起してきた経緯があります。
私も警告動画を出したりしていました。

今回の理由も、こういった事務所が「23条照会やってます、ちゃんと手続きしてます、だから着手金は返せません」という言い訳に使われるのが嫌なので、その時点で、弁護士会が依頼者に連絡して、弁護士による被害を減らすよ、というものです。

まあ、仕方がないのでしょうが、本質的な解決とは違うんですよね。

これらの動きの前提として、弁護士会自体が、これらの詐欺での被害回復の難しさを訴えるだけなのは、何とかならないものでしょうかね。

詐欺女性

投資詐欺被害弁護は難しくなる

弁護士会の注意喚起などもあり、投資詐欺被害の案件依頼を受けにくくなっている現状があります。

弁護士事務所も費用が入らなければ手続きを進めることができませんが、そのなかで、弁護士会も回収確率低いって言ってるよ、という前提を説明するので、結局、相談で終了したり、相談の予約も入れない事件が増えていきます。

そのような被害者は、広告を見て「回収確率が高い」と謳う事務所に依頼し、被害に遭いそうな気もします。

このような詐欺被害に対し、警察も捜査を強化すると報道されていましたが、AIの進化により被害が拡大する可能性のほうが高そうです。

詐欺被害者の傾向

以前は、いわゆる情報弱者的な人が被害者になっていることが多かった印象ですが、最近では、一般の人や社会的地位の高い人でも高額の被害に遭うケースが増えています。預貯金が多く、投資の知識がある人でも被害に遭っています。
SNSやAIの進化により、人々が騙されやすくなっているとしか思えません。

LINEのコミュニティで、架空のアプリに入金させる手口に引っかかる人も多いです。

油断しないほうが良いです。

投資詐欺被害の予防

詐欺被害回避の点からすれば、キーとなるのは勧誘と送金手段
これらの規制が重要です。

何といっても、投資資金等の送金の場合に、他人名義の口座に振り込まない、仮想通貨・暗号資産を使わない、という点を意識すれば、大部分の被害は回避できます。最近、見かけるのは、ほとんどがこのどっちか。

個人名義の銀行口座に送金することが詐欺の典型的な手口です。法人名義の口座でも他人名義の場合は、注意が必要です。毎回、送金先口座が違うとか、クロです。

法人破産の事件で、過去の預金取引を見ると、単発的に名義貸しをしている事案なども見かけます。

勧誘部分の予防は微妙。マッチングアプリやSNS経由で投資勧誘されたら、詐欺確率が極めて高いのですが、SNSでもごくまれに有益な情報が交換されている例もないわけではないです。

ただ、性悪説で判断したほうが無難です。

被害回復

予防に対し、事後的な被害回復については、弁護士会も認めているように、現状で有効な手段は少ない。
そもそも加害者の特定ができないからです。
数少ない回収事例としては、口座名義や携帯電話名義の照会をして名義人に対し、共同不法行為としての請求をする方法。ただ、相手にたどりつけても資力がないと回収できない。
そのため、着手金部分が赤字になるリスクはあります。
事例から見る期待値からすると、マイナスの戦いです。

この点を何とか打開したいものの、弁護士が集まっている弁護士会ですら、回収むずい、って言ってるわけですからね。

SNSへ詐欺広告を出しているメタ社への損害賠償が認められでもすれば、プラットフォーム側へ勧誘責任を問える可能性があり、被害回復に役立つ可能性がありますが、難しい問題ですし、やっぱり根本的な解決とは違いますよね。

被害回復のロードマップができると良いのですが、AIに聞いてもよい解決策を教えてくれません。

というわけで、2024年時点では、相手不明の投資詐欺、ロマンス詐欺での被害回復は極めて難しいのが実情、出金名目での追加入金などは避けましょう、それで戻って来ることないから。被害回復のため弁護士に依頼することもありますが、選択肢は極めて限られ、費用分が赤字になる覚悟はしておきましょう。少なくとも、ネット上で被害回復できる、みたいな広告には引っかからないようにしましょう。

くらいしか言えない状況です。

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