弁護士石井です。
特別縁故者への財産分与が高裁で否定されたケースの紹介です。
東京高裁平成27年2月27日決定(家庭の法と裁判8号)です。
原審の家裁では、被相続人のいとこ5人に対する財産分与が検討されました。
その結果、
Aさんに、2000万円相当の不動産+500万円
Bさんに2500万円
その他3人には1500万円ずつを分与するとの審判がされました
。
これに対して、Aさんが、Bさんより自分の方が多いはずだと即時抗告。
高裁は、
特別縁故者と認められるためには・・・
例えば被相続人と生計を同じくしていた者と同視できるほどに被相続人と密接な生活関係があったとか、その程度はともかく、日常的に被相続人の自宅等を訪れて何くれともなく被相続人の日々の生活等を援助していたとか、被相続人の介護を担っていたなど、被相続人との間で実際に密接な生活上の一体関係や援助関係等が認められることが前提となっているものと解するのが相当である。
この点について、抗告人を含む原審申立人らは、実母と2人暮らしとなった被相続人と幼少の頃から兄弟姉妹同様に成長し、被相続人成人後も生涯独身であって被後続人と継続して交流し、有形無形で援助を続け、その精神的支えとなった数少ない相手であった上、被相続人の祭祀を今後も執り行う意思を持っているのであるから、原審申立人らはいずれも被相続人との間に特別の縁故があったと主張している。
・・・(中略)
約60年以上の期間にわたって、被相続人と原審申立人らとが一緒に住んでいたことはなく、被相続人の財産形成に原審申立人らが何か積極的な貢献をしたことはうかがえないし、被相続人は死亡する直前まで日常生活には何ら支障がなく元気で生活していたようであり、特に原審申立人らkら介護や生活上の援助を受けていた事実も認められない。
・・・(中略)
被相続人が成人となった後、その生前に原審申立人らと一緒に撮影された写真は1枚も提出されていないし、4枚提出されている一緒の写真は、全て戦後の幼い時の写真だけである。
しかも、親密な交際をしていたというのであれば、手紙やはがき等のやりとりも多数あってしかるべきであるが、被相続人から抗告人を含む原審申立人らに対して送られた手紙なども見当たらない。
・・・(中略)
本件において、原審申立人らの主張を裏付けるものとして提出されている資料は原審申立人らの陳述書等だけであて、客観的に原審申立人らが被相続人の特別縁故者に該当することを裏付けるに認めるには十分ではなく、これらの資料だけによって直ちに原審申立人らが被相続人の特別縁故者に当たるとまで認めるのは困難である。
という内容の決定で、原審判を取り消し、家裁に差し戻しました。
申立人全員について、あらためて特別縁故者にあたるかどうか、再
検討せよ、という話です。
家事事件手続法206条2項により、不服申立をしたAさんだけで
はなく、他の人も判断をやり直させられることになります。
Aさんの2500万円も幻に、他のいとこも、幻の決定となりました。
こういう決定をもらってしまうと、Aさん、うらまれてしまいますね。
客観資料がないケースで家裁の判断に不服申立をする際には、チェックしておいた方が良いでしょう。
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