弁護士石井です。
『電気通信放送サービスと法』という本を読みました。
NHK受信料の話や、過去の放送サービス、電気通信で消費者問題の歴史がまとまっていて参考になる文献です。
普段あまり聞かない法律も取り上げられていて、いざという時に使えそうです。
本の中では、電気通信事業法についての解説もされていました。
この法律の中では、電気通信事業者は、電気通信役務の提供について、不当な差別的取り扱いをすることを禁止されています(6条)。
差別的取り扱いについては、人種、国籍、思想信条、年齢、性別などで、電気通信役務の提供の有無、内容及び条件について差別や区別をしてはいけないとされています。
電気通信事業法と自己破産
破産手続きについても、この条項による解釈が使われるシーンがあります。
破産手続の結果、免責許可を受けられた消費者については、過去の利用料金を滞納していても、支払い義務が消滅してることになります。
過去の料金の未払いがあったとしても、消費者が新たな電気通信役務の提供の申し込みをした際に、事業者は拒絶できないと解すべきとされています。
破産手続きの趣旨は、債務者の経済的な更生を図るための制度とされていて、基礎的な電気通信役務は社会のインフラとして重要な役割を担っているので、このインフラの利用から排除される事は、破産手続の趣旨にも反することになるとされています。
また、携帯電話やスマホの電気通信役務では、基礎的な電気通信役務の場合とは異なり、事業法は提供義務を規定はしていません。
しかし、現在、モバイルサービスが固定電話に変わり、社会の基本的なインフラとしての重要な役割を担っていることを考えれば、少なくとも未払い料金が免責され、事業者に対する支払い義務がないといえる状態になっているのに、その未払いの事実を理由にして、新たな電気通信役務の利用契約の申し込みを拒絶して、役務を提供しない対応は、事業法6条の差別的取り扱いに該当すると解すべきであるとされています。
過去の滞納を問題視されたときには、この理論をぶつけることになろうかと思います。
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