「舟を編む」ではないけれど、辞書作りの話

弁護士の香崎です。

少し前、本屋大賞の「舟を編む」の話題が出ました。
舟を編む

まさかのかぶり~舟を編む

私はこの本はまだ読んだことがありませんが、辞書を作る話だそうですね。
偶然ですが、私が最近読んだ本も、辞書を作る話です。「オックスフォード英語大

辞典」の誕生秘話について書かれたノンフィクション、サイモン・ウィンチェスター著

「博士と狂人」。

「舟を編む」は、癒される話のようですが、こちらは話の始まりが殺人事件で、それ
も、精神疾患を抱えた元外科医の男が、ロンドンの貧民街で見知らぬ男を射殺した

事件という、おどろおどろしい始まり方です。そして、この犯行は現代でいう「心神喪
失」状態での犯行とされ、男は無罪となった代わりに、無期限で病院に収容されてし
まいます。そして、男は偶然のことから上記の辞典編纂事業に協力することになり、
膨大な蔵書を読み込み、単語の用例等について何万点も拾い上げ、それを病院の

独房からオックスフォードの辞典編纂室に送り続け、初版12巻(全面改訂後は20

巻)というこの大辞典の完成に多大な貢献をしたという実話です。

なお、現在の日本では、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者について

は、医療観察法(これは略称で、正式名はもっと長いです)に基づき、裁判官と医師

の合議体により審判を行い、強制的に入院あるいは通院をさせるか等の判断をしま

す。

この元外科医の男は、もともと極めて高い知性を有していたようですが、収容された
病院で10年間の独房生活を送った後、上記の辞典編纂作業に協力するようになり、
一時的にでも状態がよくなったということです。自分の行為が他人に認められている
ことが、かなりのモチベーションになったようです。
これは稀有な例だからこそ、こうして物語にもなっているのでしょうが、何かこうや
って他人に認められることをできる機会を持てれば、と思います。

以上、今日は「博士と狂人」を通して、医療観察法の話でした。
かろうじて法律に絡めた話になって、ほっとしています。

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