弁護士石井です。
最近、「サクラサイト被害救済の実務第2版」が出版されていたことに気づき、内容をチェックしてみました。
特に注目したのは、国際ロマンス詐欺に関する具体的な解決方法についての記述です。
ロマンス詐欺の現状と問題点
国際ロマンス詐欺に関しては、弁護士会なども被害金の回収が現実的に困難であることを認めています。
それにもかかわらず、回収可能性が高いかのような広告で集客し、高額な着手金を取る弁護士事務所の存在のほうが問題となっています。
詐欺被害の回復方法とは
メインはサクラサイト被害に関する書籍ですが、ロマンス詐欺などの方法も紹介されていました一般的な詐欺、投資詐欺、占いサイトの被害などにも適用できる可能性があります。「国際ロマンス詐欺に関する具体的解決方法」という章まで準備されていました。
具体的な解決方法としては、主に以下のようなものが挙げられています:
1. 銀行振込の場合:
– 口座凍結
– 仮差押え
– 口座名義人に対する訴訟
– 預金からの回収(強制執行)
2. 暗号資産の場合:
– 取引の追跡
– 国内取引所への入金確認
– 弁護士会照会による情報収集
– 名義人に対する責任追及
いずれも、資金の流入先の名義人に対する責任追及という方法。
しかし、暗号資産の場合、現実的には海外の取引所に送金されていることが多く、その場合は弁護士会照会等すら使えないため、回収が困難とされています。
書籍の中では国内取引所への流入で仮差押が効いた事例が報告されていますが、複数ウォレットを経由したら、取引所の名義人への請求が難しくなる可能性も高まるでしょう。
暗号資産取引の追跡の難しさ
ビットコインなどの暗号資産は、ブロックチェーンにより過去の取引が記録される仕組みですが、匿名性が高いため、実際の所有者の特定は困難です。
また、分散して取引が行われると、全ての取引を追跡するのは非常に労力を要します。追跡ツールも存在しますが、海外の取引所に送金されると、結局、特定が困難になることが多いのです。
加害者の特定が問題
結局、現実的に回収できる可能性が一定程度ある方法としては、預金口座凍結、残高があった、ラッキー、そこから回収というルートだとされています。
このような回収方法は、サクラサイトや投資詐欺でも同様でしょう。
サクラサイトのように運営業者が特定できている場合は、業者への責任追及という方法もありますが、国際ロマンス詐欺、投資詐欺の場合は、相手の特定が困難であることが特徴的です。SNSを利用した投資詐欺、副業詐欺なども同様の状況にあると考えられます。
結論として、現時点では目新しい解決方法は見当たらず、被害者救済のための新たなアプローチの開発が今後の課題となっているといえます。
残念ながら詐欺被害での弁護士依頼は、期待値が低い状態が続いています。
コメント