弁護士の香崎です。
つい最近、刑事の国選弁護事件で、外国人が被告人となった事件を初めて
担当しました。
とりあえず結果としては、願っていたとおりの判決になったので、ひと安心で
した。
それにしても、言葉の分からない外国で身柄拘束された場合、どれほど恐ろ
しい思いをするか、想像するだに怖いです。特に、身に覚えのないことで突然
拘束されでもしたら、パニックになりそうです。今回の事件でお世話になった
通訳さんの話でも、身柄拘束されている間、(否認事件でなくても)取り乱して
パニックになる人は珍しくないそうです。
私も昔、ちょっと怖い思いをしました。一人旅で、イスタンブールの安宿に泊
まっていた時のことです。宿代を先に払い、夜一人で部屋にいてそろそろ寝
ようかと思っていたところ、男3人がドンドンドンとノックをしてきました。何かと
思って開けたら、宿に支払った札(米ドル札)が偽札だというのです。見ろ、
と、紙幣をこするとインクが落ちるのです。なにー!?そんなこと言ったって、
これは東京の住友銀行(当時)で両替したものだぞ、と、そんなことを言って
も彼らはもちろん納得しません。手持ちの残りのドル札を取り出して彼らの
前でこすってみましたが、程度の差はあってもやはりインクが落ちるものが
多い。私はなるべく大げさに『何てこった、俺もびっくりだよ』という表情をして、
なるべく印刷の落ちないものを選んで、支払いに使った紙幣と取り替えて、
納得させました。途中彼らの一人が両手首を前に出して手錠をかけるジェス
チャーをしたのには、ひやりとさせられました。
今はどうだか知りませんが、米ドル札のピン札って、そんなもんなのでしょう
か。
日本で通貨を偽造したり偽造通貨を使ったりした場合は、刑法148条により、
無期又は3年以上の懲役刑という刑罰が定められています。かなり重い罪
です。
ところで、日本の刑事裁判では、被告人が日本語を解さない場合、法廷通
訳が付きます。これは、条約や刑事訴訟法で保障されています。警察によ
る取調べや弁護士の接見でも、通訳が付きます(付けてます)。日本人の
場合の倍の手間がかかって大変ですが、上のような自分の経験からも、し
っかり通訳してもらって、被告人には自分がどういう立場に置かれているか
など、よく理解してもらいながら進めなければなりません。
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