弁護士石井です。
毎月、日弁連から送られてくる『自由と正義』という雑誌。
いつもパラパラとしか読みません。
今日も、積み上げられた郵便物の下から取り出した10月号をめくっていました。先月号じゃないか。
目に飛び込んできたのが次の記載。
「最近、拘置所接見において、弁護人が電子機器類の持ち込みを禁止する旨の掲示に違反して携帯電話やデジタルカメラを持ち込み、被疑者・被告人の映像を撮影し、その写真データを消去せずに持ち去ったことに対し、拘置所長から当該弁護士に対する懲戒請求がなされる事案が頻発している」
これには驚かされました。
私は、弁護士になりたての頃、刑事弁護に力を入れている先輩弁護士から教わったことがあります。
「ダメって言われてるけどさぁ・・・撮っちゃうね」
と。
何のことかと言いますと、事実を争っている事件の場合に、警察の取り調べが行きすぎることがあります。
極端な話をすれば、警察官から暴行を受けるようなケースもありました。
自白の強要が問題であったのは、最近の再審無罪事件からもわかるでしょう。
「撮っちゃう」というのは、何かと言うと、
弁護士が被疑者に接見に行きました。
なんか、被疑者がケガしてる。
顔に傷がある。
顔にアザがある。
体の目立たない部分にアザがある。
などという状態で、
「実は・・・取り調べで暴行を受けまして・・・」などと告白されたときの対応の話です。
もちろん、本来は、そのような取り調べは許されない、警察や検察相手に内容証明で警告、などという方法をとるべきでしょう。
そのケガの状況を証拠にしておくための手続もあります。
しかし、まず、とりあえず証拠を確保しておくという手段として、手持ちのカメラで撮影しちゃう、という方法が頭に浮かびます。
これをやるかどうかの問題です。
幸い、私が過去に担当してきた刑事弁護事件では、暴力までふるわれる事件はありませんでしたので、接見室で撮影するという経験はありません。
しかし、もし、目の前にケガをした被疑者が現れていたら・・・
撮っちゃっていたでしょうね。
撮影自体が違法かどうか、上記記事の中では、そもそも弁護人に撮影を禁止するのは権利ではなく、任意の協力を求めているにしかすぎない、とされています。
とはいえ、懲戒請求がされている事件があるというのは事実。
さて、今後、このようなことがあったらどうするか?
私たちはそれをしっかりと考えておかないといけません。
私たちは何のために活動しているのか、何のために与えられた権限なのか。
原点を忘れると道を踏み外します。
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