民事再生手続における多数派工作

弁護士の石井です。

債務を大幅に減らす民事再生では、債権者の同意が必要です。

小規模個人再生などのいわゆる個人再生手続では、さほど要件が厳しくないのですが、法人の民事再生では、個人よりも厳しいです。

民事再生法172条の3により以下のように決められています。

再生計画案を可決するには、次に掲げる同意のいずれもがなければならない。

一  議決権者(債権者集会に出席し、又は第百六十九条第二項第二号に規定する書面等投票をしたものに限る。)の過半数の同意
二  議決権者の議決権の総額の二分の一以上の議決権を有する者の同意

つまり、頭数の過半数債権額の過半数

債権者が11人いたら、6人の同意
債権額が5000万円だったら、2500万円以上の債権者の同意が必要です。

後者の債権額の過半数については、法人の民事再生の場合、メインバンクなど金融機関が債権額の大部分を占めていることも多く、金融機関との調整、主要取引先との調整で要件を満たすことができます。
金融機関や主要取引先の同意すら得られないケースでは、民事再生は困難かと。

前者の頭数の過半数が、厳しい会社もあります。
多数の取引先、消費者が債権者であるような場合など、どのような意見が出されるか読めないケースがあります。

そこで申立会社が考えるのが多数派工作。
もともと同意してもらえる100万円の債権があったら、10万円ずつ10人にわけたら、同意債権者が10人になるじゃないですか。
しかし、あからさまな多数派工作は、「不正な方法」だとして認可されません。

最高裁判所平成20年3月13日決定では、

「 (1)民事再生手続による方が破産手続によるよりも債権の回収に不利な債権者がいて,再生計画案が可決されないことが見込まれていた状況の下で,Xが再生手続開始の申立てをする直前に,Xの取締役であってそれまでXに対する債権を有していなかったAが,回収可能性のないXに対する債権を譲り受け,その一部を同じくXの取締役であってそれまでXに対する債権を有していなかったBに譲渡した。
  (2)AとBが再生計画案に同意するものとして議決権を行使したことにより民事再生法172条の3第1項1号の要件を充足し,再生計画案が可決された。」

という頭数を増やした方法で可決された件で、不認可事由があるとしています。

民事再生手続の際にはご注意を。

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