「すべてまかせる」との遺言

遺言 相続

弁護士石井です。

遺言の解釈が争われた裁判例です。

遺言

遺言で財産を取得したと主張する姪と、相続人の紛争です。
姪から相続財産の預金の請求がされたものです。

問題となった遺言は、被相続人の入院中に書かれたものでした。
そこには、
「○○に」
「すべて任せる」
と書かれていました。

「○○」には、姪の氏はあるものの、名の部分は誤記があり、これを訂正したものでした。
ただ、民法で決められた訂正方法を守っていなかった。

※民法第968条2項
自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

また、「すべてまかせる」って遺贈の趣旨なのか、なんなのかと争われました。

まあ、遺言が無効だと争われても仕方ない内容でしょう。

判決では

・姪は入院中の被相続人を毎週末、見舞っていた。
・預金通帳や印鑑を預けていた
等の事実を認定し、

誤記部分の訂正前の名前と同じ人物は関係者ではおらず、明らかな誤記の訂正であり、
民法の方法を守っていないからといって、遺言を無効とまではいえない

「まかせる」との文言について、入院中の被相続人があえて財産管理を任せるという記載をすることは考えにくい。
遺産分割の取りまとめではなく、遺贈と解釈できる。
として、姪の主張を認めました。

遺言の解釈については、形式的な文言だけではなく、作成経緯等も考慮されることから、このような判断がされたものです。

時間が許すのであれば、費用を払ってでも専門家にチェックしてもらっておけば、無効だと主張されないような遺言が作れたかもしれませんね。

この判決があるからって、くれぐれも「すべてまかせる」なんて遺言書は作成しないようにしてください。

 

 

 

東京地方裁判所判決平成29年9月13日
(1) 本件訂正は,民法968条2項所定の訂正方式を経ていないものである。しかし,一般的に「X1△子」というのは,遺言者であるAが「まかせる」対象として考えられる人の氏名又は呼称を指す言葉としていささか想定し難く,また,本件においても具体的に「X1△子」に該当するとみられる人物は見当たらない一方,「△」及び「□」の漢字は,部首となる脚(「△」については「◇」,「□」については「×」)が異なるものの,その余の構成部分は共通するといえる。以上に照らせば,本件訂正は,本件遺言書の記載自体からみて明らかな誤記訂正であるといえ,民法968条2項所定の加除方式を経ていないことをもって,本件遺言を自筆証書遺言として無効であるということはできない。
(2) 次に,本件遺言の趣旨について検討すると,前記1(1)ないし(3)のとおり,Aが,原告が小さい頃から原告と親しく交流を持ち,原告に対して厚い信頼を寄せる中で,晩年には,重要な財産の管理を原告に委ねたり,自己の財産を原告に譲る意思を示していたことや,Aが,原告の父の四十九日の法要において,集まった親戚に対し,自己の財産管理を実家の跡取りである原告に委ねている旨を明らかにしており,病床に伏していたA(Aは,本件遺言書作成の翌日,死亡した。)が,あえて財産管理を原告に委ねる旨を遺言書により明らかにする必要は認め難いことに照らせば,「AはX1にすべてまかせる」という本件遺言は,遺産分割手続等の相続手続を取り仕切るよう求める趣旨ではなく,Aの遺産全部を原告に包括遺贈する趣旨のものであると解するのが相当である。

 
厚木の弁護士事務所 相模川法律事務所

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