時効の「中断」?それとも「猶予・更新」?

今回は、時効援用に関する言い回しについてのお話です。

債権法改正による概念の整理


 債権法改正の際、時効の「中断」は、「猶予」と「更新」に改正されました。

 これは、「中断」には、時効期間のカウントを止める効果とリセットする効果の2つがあったためです。2つの効果が常にセットであれば問題はなかったのですが、効果の発生時期がずれる場合やリセットの効果だけが生じる場合もあり、若干複雑でした。
(慣れてしまえば、不便さは感じていませんでしたが。)

 そのため、カウントを止める効果を「猶予」、リセットの効果を「更新」と整理されました。

猶予・更新で話が通じるのか


 ただ、私は現在でも「中断」という表現を使うことがあります。むしろ、次の理由から、「猶予」や「更新」を使うことの方が少ないです。

 私が「中断」を用いている最大の理由は、「猶予」や「更新」で相手方に伝わるのかという懸念です。特に金融業者の担当者と話すときは、「支払の猶予」などと誤解されないか気になります。「時効の猶予・更新」と言えば誤解がないのかもしれませんが、長い上に、相手方が聞き漏らした場合には誤解の可能性は残ります。

 これに対して、これまで使われていた「中断」であれば、誤解の可能性は低くなります。理論的にも、債権法改正前の判決等は「中断」ですから、間違いでもありません。

 準備書面など正確性が求められる場面では正確な使い分けをしますが、訴訟において「中断」などを争うことは、さほど多くありません。

今後について

 旧法を適用する事案が減少していくなかで、いずれは、現行法の規定に合わせて「猶予」「更新」に統一しなければならないとは考えています。ただ、それがどのタイミングなのかは模索中です。

 相手に伝えることが目的とすれば、「猶予」「更新」が定着したタイミングということになりますが、なかなかにはかりがたいところです。


弁護士 坂本 学

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