弁護士の香崎です。
大昔、企業に入った時の、入社直後の新入社員研修の時のことです。
新入社員70人ほどが一堂に会していて、連日講義を受けたりしていたのですが、
休憩時間等になると、出入りを許可されていた保険勧誘員のおばちゃんたちが、
それはもう熱心に保険勧誘に来ていました。
我々新入社員の側でも、社会人になったんだから保険ぐらい入るのが当たり前、
という雰囲気があったため、相当な人数が契約していたようです。
私は最後まで入りませんでしたが、それは少数派でした。
同期からは「何で保険ぐらい入らないんだ?」と不思議がられましたが、全然入
る気はありませんでした。理由は簡単、「俺が今死んだところで誰が経済的に困
るというのだ」という単純なことです。
数年後、医療保険だけ入りました。月1500円の掛け捨てでした。けがや病気を
したら治療代がかかるということにようやく思いが至ったからです。(幸い、いま
だに使ったことはありません)
更に数年後、結婚して、妻も懐妊しました。その時、今俺が死んでも死亡保険金は
医療保険で50万円しか出ないということに気付き、ようやくこの時それなりの死亡
保障のついた生命保険に入りました。
安上がりな人生です。
しかし、今考えても、なんでみんな20代前半の独身で生命保険なんかに何の抵抗
もなく入ったのか、不思議です。
ここまで書いていて、そういえば何かの本で、「人は、生命保険に入った時から
若者でなくなる」というようなことが書いてあったな、と思い出しました。
はて、あれは何の本だったか。心当たりの本を本屋で立ち読みをして、分かりま
した。沢木耕太郎の短編集「バーボン・ストリート」に収められた短編の一つ、
「ポケットはからっぽ」。
人はいつから青年でなくなるのか。それは、年齢でもない、結婚でもない、自分
の命のカタを誰かに残したいと考えて生命保険に入った時、その瞬間に「青年」
ではなくなるのではないか、と。
確かにこれはそのとおりかもしれません。そして、私の青年期はとっくに過ぎ去っ
てしまったのだと、深く実感できます。
一方、子供らが自活できるようになった後は、私は彼らに対して少なくとも金銭
的には何も残す必要はないだろうと思っています。だとしたら、その後は第2の
青年期を迎えられるかもしれない。こう考えるととても心が躍ります。
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