弁護士石井です。
不貞行為による慰謝料を請求される人がいます。
その際、裁判などでよくする反論のなかに、関係を持った時点で「夫婦関係は破綻していた」というものがあります。
この主張はなかなか通りにくいのですが、認められた裁判例もあるので、慰謝料請求された側は必死に主張します。
『不貞慰謝料の実務』という本の中に、この点に関する裁判例がこれでもかとたくさん載っていましたので、反論する際にはチェックしておくと良いでしょう。
判例による不貞慰謝料請求の実務 | |
中里和伸
LABO 2015-06-22 |
この本をもとに、「破綻している」と主張する際に、よく使われる事情について検討してみましょう。
反論1 「当時、夫婦は別居していた→だから破綻」
夫婦の別居は、「破綻していそう」という一つの材料にはなりますが、要件とまではいえません。
また、別居イコール破綻という関係にもありません。
すなわち、別居に至っていなくても、破綻が認められるケースもあれば、
別居していても破綻していないとされるケースもあります。
結局、別居に至った経緯とか、その後の関係など、もっと突っ込んで主張しないと効果が薄いことになります。
まして、「家庭内別居と聞いていた」くらいの主張では効果が薄いです。
反論2 「当時、夫婦間には性交渉がなかった→だから破綻」
この主張もよくされます。
不貞をした配偶者は不貞相手に対して、「夫婦間ではないんだよ」などと言っていることも少なくなく、不貞相手がこのような主張をしたがる、という傾向にあります。
ただ、効果は薄い。
裁判例の多くは、夫婦間での性交渉がなくても、破綻していたとは認めていません。
逆に、性交渉があったという場合には、夫婦関係が破綻していないと認められやすくなります。
このように、よくある反論は通りにくく、結局は、色んな事情を主張しないといけないことになります。
それでも、不貞慰謝料の裁判で、夫婦関係が破綻していたと認めてもらうハードルは高いです。
「円満ではないが」「危うい状態だが」「破綻寸前だが」破綻はしていない、と否定する裁判例は多数。
請求側からの再反論
つまり「破綻なんかしていない」という反論で裁判例で採用されたものも紹介しておきましょう。
配偶者が作った食事を食べていたという事情→破綻していない
夫婦関係は破綻に等しくても、子の養育を通じて接触はある →破綻していない
というように、子や家庭生活の事情により破綻していないという結論が導かれる傾向にあります。
反論3 「夫婦間では離婚の話がされていた→だから破綻」
夫婦間で、離婚の意思を表明した場合には、破綻を認める裁判例があります。
離婚の協議や、調停などがされていれば、破綻が認められる可能性が少しは上がるといえるでしょう。
よくある反論の中では、比較的有効そうです。
弁護士の立場からすれば、不貞行為は決して勧められるものではありませんが、すでにそんな関係になってしまっている場合には、配偶者からの請求に備えて、これらのポイントを頭の片隅に置いておく方が良いかと思います。
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