兄弟姉妹間の扶養

裁判所 家事

弁護士石井です。

兄弟姉妹間の扶養に関する裁判例の紹介です。

「親子じゃなくて、兄弟で扶養?」
と思うかもしれませんが、兄弟姉妹間にも扶養義務はあります

兄弟姉妹が多い年代が高齢者になる時代、社会問題になってもおかしくありません。
兄弟姉妹がいる人は、他人事じゃないです。

 

事案

今回のケースでは、兄弟のうち、扶養が必要な人が一人いた。
一人が扶養していた。
他の兄弟に負担を求めた。
という流れです。

負担の割合のほかに、過去に負担した扶養料の請求が認められるかが争われました。

 

結論

扶養料を生活保護基準で算定し、扶養可能な人は負担
過去の扶養料については、請求時にさかのぼって負担を認めた

経済的に余裕がない兄弟には扶養義務を認めていません。

この判決の内容からすれば「請求時」からとされているので、自分だけが負担している、という人は他の兄弟に対し早めに請求した方が良いことになります。

東京高等裁判所決定平成28年10月17日

扶養の程度についてみるに,生活扶助義務に基づく扶養料の額については,扶養権利者の生存権を確保するとともに,扶養義務者の扶養義務の範囲を明確にするという観点から,生活保護基準を目安として定めるのが相当である。
平成25年□月以降の抗告人Bの扶養料の額は,月額8万円と認めるのが相当である。

相手方は,抗告人Aから,平成25年□月□□日付けの書面で,抗告人Aが抗告人Bに対して支払った扶養料の精算を求められたが,それまで,相手方が抗告人Aから,抗告人Bの扶養に関する相談や連絡を受けたことはなかったこと(乙1,審問の結果),平成25年□月以降の抗告人Bの扶養料は月額8万円が相当であること(上記(2))に照らすと,抗告人Aが相手方に対して求償できる過去の扶養料は,平成25年□月から基準日(平成27年□□月□□日)までに抗告人Aが抗告人Bに対して支払った扶養料に基づき算定するのが相当であり,その額は月額8万円を上限として,これを扶養能力のある扶養義務者の人数で除した額に限られると解するのが相当である。

また,抗告人らは,生活保護においては,固定資産税,保険料,上下水道の基本料金等が免除されており,抗告人Bが支払っているこれらの費用の合計は月額2万5000円であるから,扶養料の月額は少なくとも10万5480円(8万0480円+2万5000円)となる旨主張する。しかし,生活扶助義務に基づく扶養料の額については,上記(2)のとおり,生活保護基準を目安として定めるのが相当であるところ,抗告人らが主張する抗告人Bの支出は,これを上記生活保護基準で算定された金額に上乗せしなければ,抗告人Bの生存権が確保されないとまでは認め難いから,抗告人らの上記主張は採用できない。

ウ 抗告人Aは,平成25年□月□□日から平成27年□□月□日までの間,上記1(3)ウの表のとおり,抗告人Bを配送先と指定して物品を購入しているが,購入に係る物品は,ペット用品,服飾品,電化製品,健康食品及び美容品であるところ,そのいずれについても,趣味ないし嗜好の範疇に属するものと考えられるから,これらの購入が扶養の趣旨でされたものと認めることはできない。

エ これに対し,上記1(3)ウの抗告人Aによる抗告人Bの預金口座への入金のうち,平成25年□月(上記アのとおり,求償可能な過去の扶養料の始期となる時点)以降の分については,抗告人Bがその頃無職無収入であったことに照らすと,扶養の趣旨でされたものと認めることができる。そして,証拠(甲30の4,62)によれば,抗告人Aは,同月から平成27年□□月までの28か月間,毎月15万円程度を入金していることが認められる(なお,平成27年□□月には入金はない。)。そうすると,抗告人Aは,上記の28か月間,毎月8万円を超える扶養料を支払ったこととなるから,求償できる過去の扶養料を算出する前提となる扶養料の支出額は,合計224万円(80,000×28)となる。したがって,抗告人Aは,相手方に対し,その2分の1に相当する112万円(なお,Fに扶養能力が認められないことは後記のとおりであるから,扶養義務者は抗告人Aと相手方の2名である。)について求償できると解するのが相当である。

「また,課税証明書によれば,Fの平成20年から平成24年までの所得金額はいずれも0円であり,平成25年は約1万7000円の年金収入,平成26年は給与収入と年金収入の合計約200万円,平成27年は合計約182万円であり(甲33の1ないし5,84の1ないし3),抗告人Bを扶助する経済的な余力があるとは認められない。相手方は,Fが相続により得た約7000万円を保管している旨主張するが,Fは,両親の遺産分割により7000万円を取得したことは認められるものの(甲9,10),平成10年に離婚し,二人の子を養育するためなどに費消した旨陳述しており(甲80,81),7000万円を現に保有していることを認めるに足りる証拠はない。他方,相手方は,扶養能力があることについて認めており,収入に関する資料は提出しない旨主張している。以上によれば,月額8万円の抗告人Bの扶養料は相手方が全額負担するのが相当である。
したがって,相手方は,抗告人Bに対し,扶養料として,平成27年□□月の半月分4万円と同年□□月から平成28年□月までの分80万円(8万円×10月)の合計84万円及び同年□□月から毎月末日限り月額8万円を支払うべきである。」

 

厚木の弁護士事務所 相模川法律事務所

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