弁護士石井です。
自分名義の預金口座から出金する行為が詐欺罪や窃盗罪になることもあります。
預金口座内のお金が、自分のお金ではなく、受け取る権限がないのを知って出金するような場合です。
会社名義の口座のケースですが、東京高裁平成25年9月4日判決(判例時報2218号134頁)があります。
事案
・被告人は会社の代表者として登記されていた
・会社名義の口座に詐欺等の犯罪行為によって振り込まれた預金があった
・被告人はこれを窓口・ATMで出金
一審は詐欺罪・窃盗罪を認め、被告人が控訴。
判決
詐欺罪・窃盗罪
「詐欺等の犯罪行為に利用されている口座の預金債権は、債権としては存在しても、銀行がその事実を知れば口座凍結措置により払戻しを受けることができなくなる性質のものであり、その範囲で権利の行使に制約があるものということができる。
したがって、普通預金規定上、預金契約者は、自己の口座が詐欺等の犯罪行為に利用されていることを知った場合には、銀行に口座凍結等の措置を講じる機会を与えるため、その旨を告知すべき信義則上の義務があり、そのような事実を秘して預金の払戻しを受ける権限はないと解すべきである」
内容
詐欺罪は人に対する行為ですので、窓口だと詐欺罪、ATMなどの機械相手の場合は窃盗罪になります。
振り込め詐欺で、振り込まれた預金口座から出金する担当者を「出し子」と呼んだりしますが、他人名義の口座から出金する権限がないため、出金行為だけで窃盗罪になります。
今回の裁判例では、他人名義ではなく、自分名義であり、形式上は、権限者となっています。それでも、実質的には権限がないとして、犯罪行為だと認定しています。
判例では、誤振込されたお金を出金する行為も詐欺罪になるとされています。
その流れと、振り込め詐欺の増加傾向からすれば、当然の判断といえます。
「自分名義の口座だからいいやん」と軽く考えない方がいいですね。
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