高齢者の法律相談と『老人の取扱説明書』

老人の取扱説明書 法律相談

弁護士石井です。

『老人の取扱説明書』という本を読みました。

 

老人の取扱説明書

炎上しそうなタイトルですね。

高齢者に関する法律相談は多いです。
相続がらみ、詐欺がらみ以外にも、高齢者自身が相談者であったり、または成年後見人の本人だったり、町の弁護士の仕事では、高齢者と関わることが多いといえるでしょう。

そんなときに、この取扱説明書が役立ちます。

この本では、ありがちな設定が紹介されています。

嫁・姑問題。
嫁が高齢の姑に対して、いろいろと話しかけても、無視される。
そこに夫が、姑に声をかけると、そこだけ返事する。

嫁としては、無視されている、と落ち込んだり、腹を立てたりする。
こういうのが積み重なって、家庭にヒビが・・・

この本では、こういうありがちなシーンの多くでは、高齢者の意図的な行為ではなく、体質的なものであると指摘。
なので、そのような高齢者の反応に対して、過敏になる必要はないというのです。

どういうことかというと、高齢者の耳は衰えがち。
その衰える内容として、高齢者の耳は、高い声が聞き取りにくくなるというのです。
すなわち、女性の高い声は聞き取りにくく、男性の低い声は聞き取れる。

だから、女性は無視されていると感じてしまう。

この体質的なものを意図的だと邪推してしまうのは、もったいないということ。

耳だけではなく、まぶたが垂れてくることによる視界の話、味覚が衰えてくることにより料理にしょうゆをかけ過ぎる話、長期記憶よりも先に短期記憶が衰えるために同じ話を繰り返しやすい話など、高齢者の体質的な話が詰まっています。

家族であっても、このような体質を知らないことで、人間関係が悪くなってしまっていることもあるでしょう。
このような高齢者の体質を知り尽くしている人として、詐欺業者があげられています。
彼らは、高齢者のことを研究しています。それが自身の利益につながるわけですから。

若い人より、高齢者の方が詐欺被害に遭いやすい理由として、詐欺業者だけが高齢者の体質を理解している、という点があるでしょう。

さらに、指摘が続きます。

ではなぜ、高齢者は願されやすいのでしょうか?
一つはポジティブバイアスといって、高齢者のほうが将来起きる悪いことを考えず物事のいい面を見がちであることが関係しているといわれています。

と、高齢者の物の見方も関係しているようです。

仕事で高齢者と関わる人、家族に高齢者がいる人はチェックすると良い一冊でしょう。

私も、高齢者からの相談を受けた際には、なるべく低い声で話さなければ、と決意しました。

 

 

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