AskYourPDFで複数の判決を比較分析(10点)

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弁護士石井です。

以前にChatGPTのプラグインAskYourPDFを利用して、

ビットトレントの開示請求に関する判決を分析してみました。

その後のプロンプトで判決分析も及第点のものも出てきました。

そこで、今回はビットトレントの開示請求をテーマに複数の判決を比較分析できないか試してみました。

結論としてはまだ難しいかなという印象。

ビットトレントの開示請求判決

ビットトレントは動画等のファイル共有サービス。これを利用したことで、動画制作会社から著作権侵害だとして開示請求される事件をよく見かけます。

ビットトレントの開示請求については請求を認めているものが多数あります。

これに対し、請求棄却の裁判例として前回取り上げた判決。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/077/092077_hanrei.pdf

これを判決1として認識させます。

請求認容例として判例検索ソフトで出てきた東京地裁の判決をPDFにして読み込ませます。

東京地方裁判所判決令和5年2月20日

これを判決2として認識させます。

個別ファイルの要約

それぞれのPDFファイルを要約するところまでは及第点レベルでした。

結論や要約レベルではまあ良いのですが、もう少し深い質問をしてみると怪しい挙動が出てきました。

存在しないページを根拠として出し引用してるかのように見せますが、実際には判決文にはない表現を回答で返してきました。

判決2において、ビットトレントの仕組みと著作権侵害について触れられている部分があります。以下にその内容を抜粋します。

ページ 8:
「ビットトレントの仕組みは、ファイルを多数の小さなピースに分割し、それぞれのピースを個別にダウンロードすることで、全体のファイルをダウンロードするというものである。この仕組みにより、同時に多数のユーザーが同じファイルをダウンロードする場合でも、ネットワークの負荷を分散させることが可能となる。」

ページ 9:
「しかし、このビットトレントの仕組みは、著作権侵害の手段としても利用されている。具体的には、著作権者の許可なく、その著作物をビットトレントを通じて配布する行為が行われている。」

以上の内容から、ビットトレントの仕組みがどのように動作し、それがどのように著作権侵害につながる可能性があるかについて説明されています。

IDを使って質問

判決1について質問しても判決2を参照してしまうなどもあり、複数ファイルを同じチャット内で使うのは混乱を招きそうです。判決1,2と定義しても、忘れてしまう様子。

プラグインの挙動を見るとPDFに割り当てられたIDがあるので、そのID番号を使って質問した方が無断そうでした。

AskYourPDFのID

それぞれの判決を個別に開いてもらって判決結果と判断理由を聞くとそこは及第点の回答がされました。

ちゃんとPDFファイルを開ければ回答はできるのですが、複数ファイルがあると、データにたどり着くのが大変になるみたいですね。

AskYourPDFによる複数判決の比較分析

そこで、今回はビットトレントの開示請求で類似事案にもかかわらず結論が逆になっているので、それはなぜか分析してもらいました

判決1と判決2の結論が逆になった理由を分析すると、以下のような違いが指摘できます。

ビットトレントの仕組みに対する理解:判決1では、ビットトレントの仕組みについての理解が不十分であった可能性があります。ビットトレントの仕組みについて詳しく説明されておらず、そのために著作権侵害がどのように発生するのかが明確にされていませんでした。一方、判決2では、ビットトレントの仕組みとその仕組みを通じて著作権侵害がどのように発生するのかが詳細に説明されていました。

著作権侵害の証明:判決1では、原告が著作権侵害を証明するための具体的な証拠を提供できなかった可能性があります。一方、判決2では、原告はビットトレントの仕組みを利用して著作権侵害が行われた具体的な証拠を提供していました。

開示請求の正当性:判決1では、開示請求の正当性が認められませんでした。これは、開示請求が著作権侵害の証明や防止に直接寄与しないと判断されたためです。一方、判決2では、開示請求の正当性が認められ、原告の著作権を保護するために必要な手段とされました。

以上の違いから、同じような事案でも裁判の結果が異なることがあります。それは、裁判所が事案の具体的な事実や証拠、法的な解釈をどのように評価するかによるものです。

回答としては微妙

請求を認容している判決2では、調査会社の調査結果においてビデオのダウンロード時のIPアドレスの開示請求がされているのに対し、以前に分析した判決1では動画のダウンロード時ではなくハンドシェイク時のIPアドレスだったために請求が棄却されているという理由だと読めました。

そこで、これらの点にたどり着けるかどうかなんとかチャレンジしたのですがなかなかうまくいかなかったです。

論点を絞って比較検討させる

この2つの判決で、結論が逆になった理由を、ビットトレントの仕組みをどのように捉えているかという点で分析してください。それぞれの判決文の中で、前提事実や理由中に、ビットトレントの仕組みをどのように捉えているか、ハンドシェイクの記載、著作権侵害のタイミング、IPアドレスなどの記載がどのようにされているか、比較したいので項目ごとに表にまとめて分かりやすく説明してください

と質問したのですが、

違うプラグインが動き出してしまう。Show Meプラグインって、図解のキーワード以外でも発動してしまうのか。「表」は、Show Meとは違うと思うのですが、発動してしまいました。

作成された図も微妙

内容が適当すぎる

プラグインを指定して質問

プラグインを指定して、ハンドシェイクを重視するよう指示して再質問したものの、今度は判決1でもハンドシェイクの具体的な記述は見当たりませんという回答になってしまいました。

ChatGPT上での同じチャットのやり取りではハンドシェイクがあったと言っていたのに、今回のPDFの数ページの調査でヒットしなかったために、ハンドシェイクについて書かれていないという間違った回答を出してしまっています。

質問文で複数の用語を入れてしまったために、うまくクエリが作られなかったのかなと思って、次は「IPアドレスとハンドシェイク、調査結果」あたりのキーワードで調べに行ってもらえるように質問し直しましたが、急に一審判決、二審判決という回答になってしまいました。

ChatGPT判決分析

残念ながら、複数のファイルを比較しての分析などまでは、まだ対応できないようです。

AI関係のコミュニティの中でも、このプラグインで複数ファイルや100ページ以上のファイルを読み込ませると回答精度がいまいちという意見が出ていました。

AskYourPDFを使うことで、ChatGPTの基本インプット量を上回ることはできるものの、PDFデータ自体が複数・大量になると難しいのかなという現時点での感想です。

今後の進化で10個ぐらいの裁判例を一気に比較分析して表にまとめてくれたりできると楽なんですけどね。

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